健康トピックス  

性感染症とエイズ

かつて日本でエイズが知られていなかったころ、血液凝固製剤が原因でエイズにかかった血友病の患者さんの例が多数ありました。現在2、000人近く存在すると推定されています。しかし今や国内では血液製剤に対する安全体制が確立されたため、エイズは主にセックスでうつる病気と考えてよいでしょう。

◎性感染症(STD)とは?

 セックスによって感染する病気を総称してSTD(Sexually Transmitted Disease)といい、エイズもその一種です。STDにはこのほか梅毒、淋病、クラミジア感染症、軟性下疳(なんせいげかん)などがあり、エイズ以外のSTDはきちんと治療さえすれば治りますが、エイズにはまだ決定的な治療法はありません。

 

◎HIVの感染力は弱いが・・・

 HIV(エイズの原因であるヒト免疫不全ウイルス)に感染している人との1回のセックスでうつる確率はわずか0.1〜1.0%といわれています。この確率からすると1回くらいのセックスでは大丈夫なはずですが、現実には1〜数回のセックスで感染している場合もかなり多いのです。なぜでしょう?
 その原因の一つに、すでにほかのSTDにかかっている人はHIVに感染しやすいという事実があります。梅毒、軟性下疳、性器ヘルペスなどは局所がただれたり、出血したりして傷口をつくるので、感染しやすいのは当然ですが、傷口をつくらないSTDである淋病、クラミジア感染症、トリコモナス症などでもHIV感染が起こりやすいのです。事実、ロンドンの性病クリニックにおける女性HIV感染者の統計では、その83%がほかの何らかのSTDにかかっていたということです。

◎エイズの予防はSTDの予防から

 

 STDにかかるような行為がすなわちHIVに感染しやすい行為です。
それらを断ち切るには
@No Sex=セックスをしない
ASteady Sex=セックスパートナーを一人に定める
BSafer Sex=より安全なセックスを守る

 この3つの方法のいずれかを守るか、組み合わせて守ることにより、HIVに感染する危険性をずっと少なくすることができます。


日医ニュース(24時間の医学No.604)
指導・東京都立駒込病院感染症科 味澤 篤