健康トピックス  

よりよい自己管理のために-ぜんそく治療の最前線-



薬に対する正しい理解を

 わが国では、ぜんそく死は減少傾向にあるものの年間2,700人(2006年)を超え、ぜんそくの子どもの割合もここ10年間で倍に増えています。
大気汚染や室内の環境の変化などが原因とされていますが、治療の面からは吸入ステロイド薬の使用率が低いことが指摘されています。
医師向けの「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2007」のなかでも、吸入ステロイド薬の使用が勧められていますが、まずは、吸入ステロイド薬の効果と安全性を患者さんが正しく理解することが先決です。
 最近、都道府県別にぜんそく患者さんの吸入ステロイド薬の使用率を調べたところ、使用率の高い県はぜんそく死が少ないという統計結果が出され、有用性が裏付けられました。
 そのほかに、吸入ステロイド薬と吸入気管支拡張薬が一緒に入っている薬(合剤)や、1日1回タイプの吸入ステロイド薬、そして長時間にわたって効く貼り薬型の気管支拡張薬なども開発され、ぜんそく治療の選択肢が増えています。

患者さん同士の協力も

 多くの研究や薬の開発などによって、ぜんそくは重い発作以外は自宅で十分コントロールできる慢性の病気と考えられるようになりました。
いざという時の「患者カード」
 厚生労働省は2006年から5ヵ年計画でぜんそく死を減らす対策に取り組んでいます。その一つとして、発作で意識がなくなったり声が出ない時などに役立つ「患者カード」があります。救急車で運ばれた病院での治療に必要な情報が書かれ、患者さんん自身の自己管理にも役立つと期待されています。

■「患者カード」に記入される標準的な事項
  • 患者さんの氏名、住所、性別、生年月日、電話番号
  • かかりつけ医、救急時に受診する病院、合併症や過去1年間の発作などの情報
  • 現在使っている薬に関する情報
  • 救急時(中発作以上)の際の薬に関する情報
  • その他
(厚生労働省資料より)

つまり、自己管理してうまく付き合うことが大切です。
 定期的受診など、医師との連携が重要なのはもちろんですが長くぜんそくと付き合っている患者さんが一定の教育を受け、「熟練患者」として、ぜんそくに対する正しい理解、正しい自己管理を示し、患者さん同士が助け合うという形も見られるようになってきました。
これも新しい患者教育として注目されています。



指導:昭和大学医学部第一内科 教授 足立 満
企画:日本医師会
協賛:グラクソ・スミスクライン株式会社