健康トピックス  

身体疲労と精神疲労?-「疲れ」に科学のメスを-



現代人は疲れている!

 ストレスにさらされて忙しい現代人は、大人でも子どもでもよく「疲れた」と訴えます。
2004年に大阪市周辺で行われた調査では、疲労感を自覚している人は約6割にのぼりました(男女2,742名が回答)。
前病気状態とも言える「疲労」は、現代人の健康をめぐるキーワードです。

身体疲労乳酸説は間違い!

 乳酸は運動による疲労の原因物質として悪役の汚名をきせられていましたが、最近の研究では、むしろ、激しい疲労から早く回復させるための善玉であるとされています。
 一方、長時間の頭脳労働や厳しいストレスにより、脳の中で大量の活性酸素が生まれ、それが神経細胞や重要なタンパクを傷つけ、そのダメージを知らせ、修復するために生じた免疫物質により疲れる、という説が最近では有力です。
また、疲れると眠くなるのも、脳に備わった一種の防御機構のためです。
疲れを客観的にとらえたい

 残念ながら疲労の研究は遅れています。
疲労は避けられず、疲労感は主観的だから、というのがその大きな理由です。
慢性疲労の厳しい状況である「慢性疲労症候群
」という病気の存在も、まだ一般には理解が進んでいません。
 そこで、疲労の程度を客観的に数量化し、同じ物差しでそれぞれの疲れの重症度を評価して、治療法を科学的に探る研究が加速的に進められています。
 休養・睡眠のとり方、抗疲労物質を含む薬や食品の開発など、今後の研究の進み方が注目されています。


慢性疲労症候群
 風邪をひいたこと、厳しいストレスがかかったことなどがきっかけで、それ以降、全身倦怠感、微熱、筋肉痛、精神・神経症状などが長く続き、日常生活に支障をきたす病気。
疲労外来特殊検査で自律神経機能、免疫機能、脳機能の異常が認められる。



指導: 理化学研究所分子イメージング研究プログラム プログラムディレクター/
大阪市立大学大学院医学研究科システム神経科学 教授
渡邊 恭良
企画: 日本医師会
協賛: グラクソ・スミスクライン株式会社