2004.5.1
第53回放送分『五月病』 ゲスト:竹元隆洋ドクター


二見いすず: 暦は早くも5月です。
芽に青葉、皐月の季節となりましたが、今月はこの時期耳にする「五月病」、そして「心の問題」について伺って参ります。
お話は鹿児島県医師会の竹元隆洋(たけもと たかひろ)ドクターです。
竹元さんよろしくお願い致します。

竹元隆洋Dr: よろしくどうぞお願いします。

二見いすず: 心の病気がご専門の竹元さんには3回目のご出演をお願い致しましたが、さて、この五月病ですが、私達が思っているものと随分違った内容の病気のようなんですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。
一般の方は五月病と言いますと、大学に入学して疲れがどっと出て無気力になっているという程度の外見的なことだと思われているようですが、これはもっともっと根が深くて、例えば幼稚園とか小学校の時代から、ずっと受験勉強・受験勉強でやってきますね。
それを親が強い力で管理します、親にとってみれば自分の愛情でそうしているつもりなんですけど、その愛情が大きな期待になり、それがまた支配になり、いわば鎖をつけて子どもを調教しているような状況があって、そこから大学に合格して、さて自由にしていいですよということになっても、それまでずっと支配を受けてきてますから、自分の意欲というか、自分でこうしたい、ああしたいという気持ちがほとんどなくて、ただ、させられてきたという状況がありますので、入学して5月くらいになったときに、いったい何をしていいのかわからない。いったい自分が何者なのかわからない。
そういったところから、ぐっと無気力感が出てきて何も出来ないというような、非常に根の深い大きな問題なんです。

二見いすず: そうなんですか。
5月が過ぎたら治るというようなものではないわけなんですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。

二見いすず: 放っておくと、重大なことにもなりかねないという病気だということですね。

竹元隆洋Dr: はい。
今も話ましたけれども、根が深い、幼児期からの問題を抱えておりますので、本人にとってみればロボットみたいに親が扱ってきた。
ですから、自分が自分で何をすればいいのかがよくわからなくなっていますね。
ちょっと難しい言葉ですが、アイデンティティの確立という、自分らしさの確立が出来ていないということですね。
親がつくった人間であります。
親の期待・希望でできた人間でありますから、自分というものを見失っているわけですね。
ですから、自分が何者なのか、何をしたらいいのかというのがわからなくなって、そのために大学を退学したり、アパートに行ってみたら朝から晩まで引きこもって生活していたというような現状があるわけです。

二見いすず: 本当に入学ですとか入社等、環境が変化する春から一段落するこの時期に起こる、重大な心の問題があるわけですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。

二見いすず: 来週も引き続きよろしくお願い致します。

竹元隆洋Dr: よろしくどうぞ。

二見いすず: お話は鹿児島県医師会の竹元隆洋ドクターでした。
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