2004.5.15
第55回放送分『五月病』 ゲスト:竹元隆洋ドクター


二見いすず: 今月は「五月病」、そして「心の問題」について伺っています。
お話は鹿児島県医師会の竹元隆洋(たけもと たかひろ)ドクターです。
竹元さん今週もよろしくお願い致します。

竹元隆洋Dr: よろしくお願い致します。

二見いすず: 先週はお母さんの方が子離れが出来ない、母親の過度の愛情が期待となって、それがまた支配となって子ども達の成長に大きく影響してきているという話を伺いましたけれども、そのことについては、子どもさんが大きくなってもやはり影響が出てくるということなんですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。
そういう過度の愛情が期待になり、支配になって子どもを抑圧するということがあります。
そのために、子どもは親の顔色をみながら、いい子を演ずるようになってしまいます。
そうするとロボットのようになって、全く無気力な人間になっていくという一つの問題が発生してくるわけです。

二見いすず: そして、成長していきますと今度は思春期を迎えますが、体は大きくなっても、やはり心は子どもの部分があってアンバランスな非常にデリケートな時期ですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。
思春期というのは非常に微妙な時期で、自分の体の中の調子も非常に成長が早いですから不安定なんですね。
特に4月・5月は、冬ごもりの動物も外に出てくるという季節的にも不安定で、さらに身体的なホルモンの変化も非常に大きく、なお不安定になりやすい時期なんですね。
その時期が重なってきているわけです。
その時期に環境への適用というので、新しい学校に入った、あるいはクラス編成があった、そういうときに対人関係がうまくいかないと学校の先生・友達とうまくいかなくなって不登校等が出てくる。
まして、そういう環境でいじめ等があると強烈な不登校の因子になってきますね。
いじめる側にも問題がありますけれども、いじめる側にもやはり心の中に家庭で愛されていないだとか、先生から愛されていないというような心の空洞があります。
それを埋めるために、対処行動と私どもは言いますけれども、心の中を埋めるために、暴力で埋めるということが起こってくるんですね。
それがいじめなんです。
いじめの問題等と同じようなことが、親が子に対する問題にも起こってきます。
例えば夫婦がうまくいかない、心の中に空洞がある。
それを埋めようとして虐待という問題が起こってきてしまう。
特に虐待の問題は、お母さんがかつて小さいときに虐待を受けた、その親が自分の感情表現として暴力を繰り返していたので、自分がかっとなったら、かつての親のように暴力が出るという学習をしてしまっていますね。
ですから、親子の問題の中でも虐待の問題は、親子関係の極地みたいなものですね。
最後には、子どもまで死なせてしまうというような問題に発展するわけです。
ですから、今の時代、親と子の関係というのは、とっても難しい関係であって、それが少子化の問題とも絡んできますし、核家族という非常に閉鎖的な小さな環境の中で、人の目に触れない環境の中で起こってしまう怖さもありますね。

二見いすず: 目の前にある現象だけではなくて、本当に根の深い問題だということがよくわかります。
ありがとうございました。

竹元隆洋Dr: いえ、どうも。

二見いすず: お話は鹿児島県医師会の竹元隆洋ドクターでした。