『認知症』 ゲスト:長友医継ドクター



二見いすず: 今月は「認知症」についてお送りします。
お話は鹿児島県医師会の長友医継(ながともいつぎ)ドクターです。
長友さん、よろしくお願いいたします。

長友医継Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 「認知症」といいますと、高齢の方に多く、物忘れなどが増えるというイメージがありますが、実際はどういう病気なのでしょうか。

長友医継Dr: はい。
認知症は、脳になんらかの病気が起こって、知能が低下していく状態のことです。
物忘れは、その症状の一つです。

二見いすず: なるほど。

長友医継Dr: 認知症で必ず現れる症状として、物忘れなどの記憶障害、今がいつなのか、ここはどこなのか分からなくなる見当識障害、現実に合わない行動をしてしまう判断力障害などが挙げられます。

二見いすず: なるほど。

長友医継Dr: また、人や状況によって、意識障害、抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想などという、周辺症状が現れる場合もあります。

二見いすず: いろいろな症状があるのですね。
驚きました。
代表的な「物忘れ」について、年齢を重ねると誰でも起こりうると思うのですが・・・。

長友医継Dr: そうですね。
人間は誰しも、加齢によって知能が徐々に低下していくのは自然なことです。
物忘れも、認知症ではなく、一般的な加齢現象として起こる場合もあります。

二見いすず: 高齢の方の物忘れも、認知症と、加齢によるものの二つがあるということですね。

長友医継Dr: はい。
一般的な加齢による知能低下と認知症の違いをご説明します。
まず、一般的な加齢による物忘れは、記憶の一部のみを忘れてしまいます。
例えば、「今朝、朝ごはんで、ご飯と味噌汁は覚えているけど、おかずは何を食べたっけ・・・?」とか、人の名前をとっさに思い出せないとか、そういうことです。

二見いすず: なるほど。

長友医継Dr: 一方、認知症における物忘れは、体験全体がぽっこりと抜け落ちてしまう状態です。
例えば、食事をしたかどうかも記憶になく、認知症の患者さんが、さっき食事をとったのに、「まだ食べていない!」と主張するのもそういった状態の一つです。

二見いすず: なるほど。それは大変ですね。

長友医継Dr: そうなんです。
認知症の方に対して、周囲の人が「食べていないと嘘をつく」「作り話をする」などと批判する場合がありますが、これは、ご本人は決して悪気があって嘘を言っているわけではなく、記憶が抜けたことから起こってしまう症状なのです。

二見いすず: そうなんですか・・・。
それは、ご本人もお辛いですね。

長友医継Dr: そうなんです。
認知症の患者さんは、記憶が「点」ではなく、「面」でごっそりと抜けてしまうので、とても不安で、いつも緊張を強いられている状態です。
その辛さを想像し、周囲も理解を深めることが大切だと思いますよ。

二見いすず: よく分かりました。
ご本人の気持ちを思いながら、接することが大切ですね。
来週も引き続き「認知症」について伺ってまいります。
長友さん、ありがとうございました。

長友医継Dr: ありがとうございました。