2015.9.26 第647回放送分 『小児外科』 ゲスト:家入 里志ドクター


二見いすず: ドクタートークは「小児外科」について、鹿児島県医師会の家入里志(いえいりさとし)ドクターにお話を伺っております。
家入さん、今週もよろしくお願いいたします。

家入里志Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は小児外科の領域の中で、乳児期、幼児期の疾患についてお伺いいたしました。
今週は学童期以降の疾患についてお話をお願いします。

家入里志Dr: はい。
小学生以上の学童期以降に多く見られる疾患としては、虫垂炎があげられます。
また、より活動性も高まりますので、幼児期と同じく、事故による内臓損傷なども多くなります。
さらに、現代社会特有のものと考えられるのでしょうか、お子さんの胃潰瘍や十二指腸潰瘍が増えています。

二見いすず: えっ、子どもの胃潰瘍や十二指腸潰瘍ですか。
原因はやはりストレスなのでしょうか。

家入里志Dr: そうだと思います。
学童期や思春期は体と心の成長がアンバランスになり、それがストレスになって病気を発症することがあります。
また、外科的な治療の対象にはなりませんが、幼児期後半から学童期にかけて、腹痛を訴えて受診される子どもさんの大半は便秘だったりします。

二見いすず: そうなんですね。
自分の症状をはっきりと訴えることが出来ない子どもだからこそ、日常生活に何か変わったことはないか、普段と違う様子はないか、親御さんがいつも気に掛けてあげることが必要なのかもしれませんね。

家入里志Dr: おっしゃる通りですね。
軽度の腹痛であっても、症状を繰り返すようであれば、精密検査を受けていただきたいと思います。
例えば、軽い腹痛を繰り返す子どもの病気として、先天性胆道拡張症があります。
この病気は外科的治療が必ず必要で、そのまま放置しておくと、
大人になってから患部にがんが発生する可能性があります。

二見いすず: そうですか。
大人と同様に子どもの病気もやはり早期発見・早期治療が重要ですね。

家入里志Dr: そうです。
大人の外科的治療は、手術による切除、再建が中心となりますが、小児外科の治療は、つくる医療というふうに言われます。
これは完全に形成されていない臓器などを手術によってつくるという意味もありますが、子どもたちのその後の人生をつくる、クリエートするという意味もあります。

二見いすず: なるほど。
小児外科の技術が進歩したことによって、病気や手術を経験しても、前向きに生きることができる子どもたちが増えたということですね。

家入里志Dr: 先天性疾患で生まれてすぐに手術を受けた人が、病気を克服して成長し、その人たちがお医者さんになっている時代です。
まだまだ手術法・治療法の確立されていない難病もありますが、近年は再生医療の研究が進み、新たな光も見えてまいりました。
病気が人生の障害になることがないよう、我々小児外科医としても、より良い手術法、治療法を模索していきたいというふうに考えています。

二見いすず: よく分かりました。
4週にわたり、小児外科について、貴重なお話をありがとうございました。
お話は鹿児島県医師会の家入里志(いえいりさとし)ドクターでした。

家入里志Dr: ありがとうございました。