2016.6.4 第683回放送分 『剣道難聴』 ゲスト:松永 信也ドクター



二見いすず: 6月になりました。
今月前半のドクタートークは2週にわたり、「剣道難聴」をテーマにお送りいたします。
お話は鹿児島県医師会の松永信也(まつながしんや)ドクターです。
松永さん、どうぞよろしくお願いいたします。

松永信也Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: まず、剣道難聴とは、文字通り、剣道をしている人が難聴になってしまうことを言うのでしょうか。

松永信也Dr: はい。
その通りです。
日本では20年ほど前から剣道による難聴が指摘されるようになりました。
宮崎大学の研究では1992年から2010年にかけて、ある高校の剣道部員を対象に調査したところ、228名中45名、約20%に30デシベル以上の難聴が見つかりました。

二見いすず: それは非常に心配なことですが、剣道難聴とはどのような原因で発症するのでしょうか。

松永信也Dr: 頭部を竹刀で叩く振動、そしてその打撃音が内耳を傷つけ、難聴になると考えられています。

二見いすず: 剣道難聴は、頭部を竹刀で叩く振動と、その打撃音が内耳を傷つけることによって起こると考えられるのですね。

松永信也Dr: はい、そうですね。
竹刀の打撃音の大きさは120デシベル程度とされており、これはバイクのエンジン近くと同等の音量です。

二見いすず: 竹刀の打撃音は私たちが考える以上に大きいということなんですね。
それでは、剣道難聴になると、どのような症状があらわれるのでしょうか。

松永信也Dr: 難聴、耳鳴り、また耳閉感といって耳が詰まる感じなどの症状が起こります。
症状は、少しずつ徐々に生じ、自覚的に気づかない例と、ある日急に強い症状が生じる例の両方があります。

二見いすず: 難聴の症状に特徴はありますか?

松永信也Dr: 障害される周波数を調べると、剣道難聴は2000ヘルツの音が障害されやすいという特徴があります。
また、それより高い4000ヘルツや8000ヘルツの音もあわせて障害される症例も少なくありません。

二見いすず: そうなんですか。

松永信也Dr: しかし、現在の学校の聴力検診では、2000ヘルツの音のチェックが行われていないため、剣道難聴が見逃されてしまうという問題があります。

二見いすず: 一生懸命、剣道の練習をした結果、難聴になることがないように大人が注意深く見守ることも大切ですね。

松永信也Dr: 剣道をやっている人は、ほとんどが小さい頃から練習をしています。
また、2012年度からは中学校で武道が必修になりましたが、剣道難聴はまだ十分には知られていないのが現状です。
ぜひ学校関係者や保護者の方々にも理解していただきたいと思います。

二見いすず: お話は鹿児島県医師会の松永信也(まつながしんや)ドクターでした。
ありがとうございました。

松永信也Dr: ありがとうございました。