2016.6.11 第684回放送分 『剣道難聴』 ゲスト:松永 信也ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは前半2週にわたり、「剣道難聴」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の松永信也(まつながしんや)ドクターです。
松永さん、どうぞよろしくお願いいたします。

松永信也Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、剣道難聴は、頭部を竹刀で叩く振動とその打撃音が内耳を傷つけることによって起こると考えられ、難聴に加えて、耳鳴り、耳閉感などの症状があらわれると伺いました。
さて、剣道難聴を発症した場合は、どのような治療が行われるのでしょうか。

松永信也Dr: 治療は、急性期にはステロイド剤、血流改善剤、ビタミン剤などを投与します。
慢性期には悪化を予防する事に努めます。

二見いすず: 治療の過程で気をつけておきたいことはありますか?

松永信也Dr: 剣道難聴は、他の急性難聴と同様に、早期に治療を開始することが大切です。
症状の回復度や回復に要する期間は個人差がありますが、少なくとも数週間は剣道の練習を休んで、耳の安静を確保していただきたいです。

二見いすず: はい。
剣道難聴にならないために心掛けておきたいことはありますか?

松永信也Dr: はい。
剣道難聴への対策としては、3つのポイントが挙げられます。
まず1つ目は剣道指導者、保護者の方々への啓蒙、2つ目は定期聴力検査の実施、3つ目は防具の付け方の工夫と防具の改良です。

二見いすず: まず、剣道指導者、保護者の方々への啓蒙をお願いいたします。

松永信也Dr: はい。
まず、頭部連打を減らした練習メニューを取り入れることをおすすめします。
また、指導目的で頭部を竹刀で叩くことはやめていただきたいと思います。

二見いすず: 竹刀による頭部の振動とその打撃音が内耳を傷つけることを避けるということですね。

松永信也Dr: はい。
その通りです。
剣道の練習をしない休剣日を設けたり、剣道をしていない時には音楽を大きな音で長時間聴かないなど、静かな時間を確保することも大切です。
また、難聴、耳鳴り、耳閉感が一晩以上続いたら、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。

二見いすず: わかりました。
次に、定期聴力検査について教えてください。

松永信也Dr: 剣道難聴でもっとも障害される2000ヘルツの聴力は、現在の学校の検診ではチェックされません。
そこで、剣道部のお子さんは、年に2回程度、病院で聴力検査を受けていただきたいと思います。

二見いすず: 防具の付け方の工夫、防具の改良についてはいかがでしょうか。

松永信也Dr: 面紐を強く縛らないこと、打撃吸収剤を使用することをおすすめします。
宮崎大学が18年間にわたり調査した高校では、これらの対策で剣道難聴の発生を大幅に抑えることができています。

二見いすず: よくわかりました。
剣道指導者の皆さん、保護者の方々は、ぜひ参考になさってください。
お話は鹿児島県医師会の松永信也(まつながしんや)ドクターでした。
ありがとうございました。

松永信也Dr: ありがとうございました。