2017.1.21 第716回放送分 『アルコール関連問題』 ゲスト:壽 幸治ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「アルコール関連問題」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の壽幸治(ことぶきゆきはる)ドクターです。
壽さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。

壽幸治Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今週はアルコール依存症についてお話をお願いいたします。

壽幸治Dr: まず、アルコール依存症とは、日常生活の中で長期にわたって大量のお酒を飲み続けることで、お酒なしではいられなくなる状態です。

二見いすず: アルコール依存症は、お酒を飲む人なら誰でもかかる可能性のある病気だと聞いたことがあります。

壽幸治Dr: はい。そうですね。
2003年の調査によると、アルコール依存症の患者数は、全国で約80万人と言われていましたが、2013年の調査では約109万人にのぼることが判明しました。

二見いすず: そんなに増えているんですか。

壽幸治Dr: そうなんです。
一方、アルコール依存症の専門的な治療を受けている人は多く見積もっても5万人程度とされ、依存症の方全体のわずか1/20です。
また、多量飲酒によるアルコール依存症予備軍も860万人ほどいると言われています。

二見いすず: そうですか。
では、アルコール依存症にはどのような診断基準があるのでしょうか。

壽幸治Dr: 世界保健機関WHOが作成した6つの診断基準によって、アルコール依存症のセルフチェックができます。
1 お酒を飲みたいという強い欲望または強迫感がある。
2 飲む時間または量がコントロールできない。
3 飲酒をやめたり、量を減らした時に、手足のふるえや発汗、  不眠、イライラ感などの離脱症状が出る。
4 耐性ができて、飲酒量を増やさなければ酔わなくなった。
5 生活がお酒中心になり、他の楽しみや趣味に関心がなくなった。
6 アルコールによる健康障害が起きているのに飲み続けている。
この6つの項目のうち、3つ以上があてはまったら、アルコール依存症と診断されます。

二見いすず: よくわかりました。
アルコール依存症になると、その影響が精神面にも、身体面にも表れ、やがて生活にも支障をきたすということなんですね。

壽幸治Dr: はい。
アルコール依存症の怖さは、そのままにしておくと体を壊したり、酔って事故を起こしてしまったり、うつになって自殺を考えたりと、命に関わってくることです。

二見いすず: そうなりますと、ご家族や友人など大切な人たちも巻き込んでしまいますね。

壽幸治Dr: はい。
アルコール依存症はお酒を飲んでいれば誰もがなる可能性がある病気ですが、本人の意志が弱いという誤解や偏見があります。
この誤解や偏見は、本人やご家族にアルコール依存症であることを否認させる原因となっており、治療、回復、社会復帰の障害にもなっています。
ぜひ社会全体に、アルコール依存症に対する正しい理解を浸透させていきたいと考えております。

二見いすず: よくわかりました。
今週はアルコール依存症についてお話を伺いました。
お話は鹿児島県医師会の壽幸治(ことぶきゆきはる)ドクターでした。
ありがとうございました。

壽幸治Dr: ありがとうございました。