2017.6.17 第737回放送分 『ワクチン』 ゲスト:西 順一郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「ワクチン」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、今週もよろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今週は、高齢者のワクチンについてお話いただけるということですね。

西順一郎Dr: はい。
これまでワクチンは子どもに接種することが多かったのですが、高齢者の健康寿命を延ばす対策としてもワクチンは重要です。
65歳以上の方は肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンが定期接種になっていますので、ぜひ受けていただきたいと思います。

二見いすず: 高齢者の健康づくりという観点からも、ワクチンは非常に大切だということですね。
それではまず、肺炎球菌ワクチンについて教えてください。

西順一郎Dr: 現在、高齢者の肺炎による死亡が増えていますが、成人の肺炎の約3割は肺炎球菌で起こります。
肺炎球菌は、肺炎以外にも血液中に侵入して菌血症を起こし、進行すると髄膜炎になります。
菌血症や髄膜炎での死亡率は10数%と高く、重症の病気です。

二見いすず: 肺炎球菌感染症は、ワクチンによる予防が可能なんですね。

西順一郎Dr: 肺炎球菌には96種類の型がありますが、その中の23種類に対して効果のあるワクチンが65歳以上の高齢者に接種されています。

二見いすず: そうなんですね。

西順一郎Dr: 定期接種の肺炎球菌ワクチンのほかに、子どもに接種している13種類の型を含んだ肺炎球菌ワクチンも任意接種として接種することができます。
含まれる肺炎球菌の型は少ないですが、免疫を誘導する力がとても強いため、高齢者にも接種がすすめられています。

二見いすず: 肺炎球菌ワクチンには定期接種と任意接種の2種類のワクチンがあり、両方をうまく使い合わせることで、予防効果が高まるということなんですね。
では一方、インフルエンザワクチンはいかがでしょうか。

西順一郎Dr: 高齢者では、インフルエンザの後に肺炎を発症するケースが多く、また、インフルエンザそのものが重症化して亡くなる方もいらっしゃいますので、年1回の接種をおすすめします。
11月頃までに1回だけ接種しておけば発症や重症化を防げます。

二見いすず: よく分かりました。
他にも高齢者が接種しておきたいワクチンはありますか?

西順一郎Dr: 鹿児島県では毎年数名の高齢者が破傷風になっています。
破傷風はけいれんや呼吸困難がみられる重症の病気ですが、土の中にいる破傷風菌に感染して起こるため、農作業や庭で園芸をされるご高齢者の方にはワクチンの接種がすすめられます。
また、高齢者では、蚊に刺されて発症する日本脳炎も見られます。
ウイルスで起こりますが、ワクチンで予防できる病気ですので、ぜひ接種を検討していただきたいと思います。

二見いすず: よく分かりました。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
どうもありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。