2017.7.22 第742回放送分 『子どもの心臓病』 ゲスト:上野 健太郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「子どもの心臓病」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の上野健太郎(うえのけんたろう)ドクターです。
上野さん、今週もよろしくお願いいたします。

上野健太郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今週は、心臓病を持つお子さんの予防接種についてお話をお願いいたします。

上野健太郎Dr: 心不全や血液中の酸素濃度が低くなるチアノーゼという状態がある乳幼児は、ウイルスや細菌に感染しやすく、気管支炎や肺炎など呼吸器の病気にかかる頻度が高くなります。

二見いすず: それは大変心配ですね。

上野健太郎Dr: はい。
心臓病のお子さんが感染症にかかると、全身状態が急激に悪化する可能性があります。
病気によってはゼイゼイしたり痰が増えたり、呼吸が苦しくなることもあります。
一方、チアノーゼのあるお子さんは呼吸器の感染症にかかると、さらに低酸素の状態が進行する危険性があります。

二見いすず: 心臓病のお子さんは、症状を悪化させないためにも、感染症の予防接種を受けることが大切だということですね。

上野健太郎Dr: はい、そうですね。
手術や治療の予定に合わせて、積極的に予防接種を受けることが大切です。

二見いすず: 特に受けておきたい予防接種はありますか?

上野健太郎Dr: 心臓病を持つお子さんの中には、生まれつき脾臓のない無脾症の方がいます。
無脾症の方が肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などに感染すると重症化しやすいので、肺炎球菌ワクチンやHib(ヒブ)ワクチンはぜひ積極的に接種していただきたいと思います。

二見いすず: 他にも注意しておきたいウイルスはありますでしょうか?

上野健太郎Dr: RSウイルスは、冬から春にかけて流行する乳幼児の呼吸器感染症の重要なウイルスです。
感染力が強く2歳頃までにほぼ100%のお子さんがかかります。

二見いすず: 心臓病のお子さんがRSウイルスにかかると、重症化しやすいのですね。

上野健太郎Dr: はい、心臓病のお子さんがRSウイルスに感染した場合には、時に致命的な経過をとることがあります。
また、手術待機中の乳幼児がかかると手術を延期せざるを得ない状況となり、適切な外科治療の時期を失ってしまいます。
このため、パリビズマブという注射を使用して、RSウイルス感染を予防・軽症化することが大切です。

二見いすず: このRSウイルスを予防するパリビズマブは、どのようなお子さんが対象になるのでしょうか。

上野健太郎Dr: RSウイルス感染流行開始時に生後24ヵ月以下の先天性の心臓病を持つお子さんで、医師が必要と判断した場合に対象となります。
心疾患があっても軽症の場合や手術・カテーテル治療で完全修復された場合は対象になりませんので、詳しくは専門医にお尋ねください。

二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島県医師会の上野健太郎(うえのけんたろう)ドクターでした。
ありがとうございました。

上野健太郎Dr: ありがとうございました。