2018.5.26 第786回放送分 『ワクチン』 ゲスト:西 順一郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「ワクチン」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、最終週の今日もよろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今週は、ワクチンの利益と副反応についてお話をお願いいたします。

西順一郎Dr: ワクチンは、多くの感染症の死亡者を大幅に減らし、現在も多くの感染症の流行を抑えています。
ワクチンは健康な人に接種するため、高い安全性が求められており、国による厳しい検定が行われています。
しかし、薬に副作用があるのと同じく、ワクチンも重篤な副反応が起こるリスクはゼロではありません。

二見いすず: ワクチンと聞きますと、どうしても副反応が気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

西順一郎Dr: きわめてまれですが、接種後すぐに血圧が低下するアナフィラキシーショックには特に注意が必要です。
これに対して医師は十分注意していますので、適切な処置を行えば命を落とすことはありません。
万が一に備えて、接種後30分間程度は医療機関内で待機しましょう。

二見いすず: わかりました。
ワクチンの種類によって副反応が違うというお話を聞いたことがあります。

西順一郎Dr: そうですね。
ワクチンの副反応は、生ワクチンと不活化ワクチンで根本的な違いがあります。

二見いすず: 詳しく教えてください。

西順一郎Dr: 生ワクチンは生きた病原体の病原性を弱めたものが体の中で増殖するために、人によっては、実際にワクチンの病原体による病気が起こることがあります。
症状はワクチンによって異なりますが、たとえば麻しん・風しん混合ワクチンでは、接種後1週間から10日ごろ、発熱や発疹がみられることがあります。
ただ、ほとんどは自然に軽快します。

二見いすず: 一方、不活化ワクチンはいかがでしょうか。

西順一郎Dr: 不活化ワクチンは、病原体の成分だけを接種しますので、実際の病気が起こることはなく、比較的安全に接種できます。
ただ、接種した当日の夜から翌日にかけて、接種部位の腫れや発熱がみられることがあります。
ほとんどは自然に軽快しますが、腫れが広がったり、高熱でだるさや不機嫌がみられる場合は、医療機関を受診してください。

二見いすず: よくわかりました。

西順一郎Dr: 日本では1975年に百日咳ワクチンで脳症などの副反応が疑われる患者が2人みられたために、定期接種が中止されたことがあります。
しかし、その後、百日咳の患者が200人から1万3000人に、死亡者はゼロから30人に増加しました。
接種を中止することで、それまでワクチンで守られていた人たちが守られなくなったケースです。
ワクチンに関して、インターネットなどにはさまざまな情報がみられますが、国や専門家などの正しい情報をもとに、ワクチンの利益と副反応を正しく比較した上で接種を検討していただきたいと思います。

二見いすず: よくわかりました。
4週にわたり、ワクチンについて貴重なお話をお伺いいたしました。
鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
どうもありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。