2019.3.16 第828回放送分 『皮膚のアレルギー』3回目 ゲスト:島田辰彦ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「皮膚のアレルギー」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の島田辰彦(しまだときひこ)ドクターです。
島田さん、今日もよろしくお願いいたします。

島田辰彦Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今週は、じんましんの原因でもある「食物アレルギー」についてお話をお願いいたします。

島田辰彦Dr: はい。
食物アレルギーは、じんましんの他にも様々な症状を引き起こします。
中でも一番怖いのが、「アナフィラキシーショック」という全身性の症状で、最悪、死にいたるケースもあります。

二見いすず: それは怖いですね。
食物アレルギーを持つお子さんが誤ってアレルゲンが入った給食を食べ、救急車で搬送されるという痛ましい事故もありましたね。

島田辰彦Dr: はい。
学校現場などで起こる食物アレルギーで意外と知られていないのが、「食物依存運動誘発アナフィラキシー」です。
アレルゲンとなる食物を食べたあと、およそ4時間以内に激しい運動をすることで起こります。
鹿児島県の事例ですが、給食で天ぷらうどんを食べた後にダンスをした子がアナフィラキシーショックを起こし、救急車で運ばれたことがありました。

二見いすず: そうなんですね。
食物アレルギーだけでなく、運動も関係しているということですか?

島田辰彦Dr: はい。
激しい運動をすると消化管に傷がつきます。普段は素通りしていた原因物質がそこから吸収されてアレルギーを引き起こします。
このタイプのアナフィラキシーは、小さいお子さんよりも中高生または大人に多いことが知られています。
特に原因物質となりやすいのが小麦とエビ・カニなどの甲殻類です。
こういうものを食べた時は、最低でも4時間は激しい運動を控えていただきたいと思います。

二見いすず: 小麦や甲殻類を食べた時は、最低でも4時間は激しい運動を控えていただく。
これはぜひ皆さんにも覚えていただきたいですね。

島田辰彦Dr: もう一つお伝えしておきたいのが、「経皮感作(けいひかんさ)」による食物アレルギーです。
経皮、つまり皮膚から入った食物が原因となってアレルギーを引き起こすもので、専門家の間でも近年になって知られるようになってきました。

二見いすず: 皮膚から入った食物というと、ちょっとイメージがつかないのですが・・・。

島田辰彦Dr: 10年ほど前に、小麦の成分が入った洗顔せっけんを使った約2000人の方が小麦アレルギーを発症したという大きな事件がありました。

二見いすず: はい、よく覚えています。
あれも経皮感作だったということですね。

島田辰彦Dr: そうです。
従来、食物アレルギーは口からの摂取で起こると考えられていて、皮膚から入った食物がアレルギーを起こすことはほとんど知られていませんでした。

 二見いすず: 経皮感作は、誰にでも起こりうるものなのでしょうか?

島田辰彦Dr: アトピー性皮膚炎や乾燥しやすい体質の方は、肌のバリアが壊れていますので、そこからアレルギー物質が入り込みやすいので、特に注意が必要ですね。
また、最新の研究では、口から入った食物が食物アレルギーを抑制しているという説もあり、小さい頃からの厳しい食事制限は逆効果だと言われるようになりました。

 二見いすず: アレルギーに対する考え方が変わってきているんですね。
お話は鹿児島県医師会の島田辰彦(しまだときひこ)ドクターでした。
島田さん、ありがとうございました。

島田辰彦Dr: どうもありがとうございました。