2019.6.29 第843回放送分 『感染症』5回目 ゲスト:西順一郎ドクター


二見いすず: 今月は「感染症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、最終週の今日もよろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 4週にわたって、今からの時期に注意が必要な感染症についてお話をうかがってきましたが、今日は特にお子さんに多い感染症についてお話をお願いいたします。

西順一郎Dr: 毎年、夏に子どもたちの間で流行するのが、エンテロウイルスによる感染症です。
エンテロウイルスは人の腸管で増殖するウイルスの総称で、代表的な感染症として手足口病やヘルパンギーナがあります。
どちらも4歳以下のお子さんにとても多い病気です。

二見いすず: 手足口病やヘルパンギーナ、これはどのような病気でしょうか。。

西順一郎Dr: 手足口病は手や足、口の中などに赤い発疹や水泡ができる病気です。
発熱も見られますが、それほど高熱ではありません。
一方、ヘルパンギーナはのどの奥や口の中に発疹ができて、高熱が1日から3日ほど続く病気です。

二見いすず: 口の中やのどに発疹や水泡ができると、食事がとりにくそうですが、痛みはあるのでしょうか。

西順一郎Dr: はい。
水泡がつぶれた後に口内炎やのどの潰瘍ができて、非常に痛いため、お子さんが飲食を嫌がることがあります。
脱水症状が心配なので、水分補給には気を付けてあげてください。

二見いすず: よくわかりました。
手足口病やヘルパンギーナは、なにか治療が必要なのでしょうか。

西順一郎Dr: どちらも1週間くらいで自然に症状は治まってきます。
高熱や脱水症状が出た場合は、対処療法をとることがありますが、治療薬は特にありません。

二見いすず: それほど重症化するような病気ではないということでしょうか。

西順一郎Dr: そうですね。
ただ、まれに髄膜炎や脳症が起こることがあるので、ご注意ください。
また、エンテロウイルスの中でも「D-68」という型のウイルスにお子さんが感染すると、喘息のような激しい呼吸器症状が出たり、手足にまひが残ったりすることがあるので、気を付けてください。

二見いすず: それはとても心配ですね。

西順一郎Dr: はい。
それから、エンテロウイルスの一種で、最近発見された「パレコウイルス」も、生後3か月未満の乳児が感染すると重症の敗血症や髄膜炎を起こすことがあります。
赤ちゃんにいつもと違う様子が見られた場合は、早めに病院を受診しましょう。

二見いすず: D-68とパレコウイルス、どちらも大変心配なウイルスですが、感染を防ぐ方法があるのでしょうか。

西順一郎Dr: エンテロウイルスは人の便を介して感染することがほとんどです。
予防は、手洗いを徹底するしかありません。
赤ちゃんや小さなお子さんがいるご家庭は、家族みんなで手洗いを徹底するよう、心がけていただきたいと思います。


二見いすず: 大変よくわかりました。
5週にわたって、感染症について貴重なお話をうかがってまいりました。
鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
西さん、どうもありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。