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2023.8.26 第1060回放送分『免疫不全症』4回目 ゲスト:西川 拓朗ドクター

二見いすず: 今月のドクタートークは「免疫不全症」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島県医師会の西川拓朗(にしかわ たくろう)ドクターです。
西川さん、最終週もよろしくお願いいたします。

西川拓朗Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今日は、何についてお話しいただけますか?

西川拓朗Dr: 今日は新生児における検査の大切さについてお伝えします。
重症複合免疫不全症のマススクリーニング検査というものです。

二見いすず: 重症複合免疫不全症。
これはどのような病気なのでしょうか?

西川拓朗Dr: 生まれつきTリンパ球やNKリンパ球という免疫細胞がつくられず、かつ抗体もつくることができず、体を守る免疫機能が極端に弱いことで、感染に対する抵抗力が著しく下がって重い感染症にかかってしまい、1歳を超えて生きることが難しいという病気です。
また、予防接種の生ワクチンで感染を起こしてしまう場合もあります。
だから早めの診断が、とても大切になります。

二見いすず: 早めというのは、生まれてどのくらいまでが目安でしょうか?

西川拓朗Dr: 生後初めて接種する生ワクチンがロタウイルスワクチンで、生後2ヶ月に行うので、その前に診断するのが望ましいです。
今までは、そんな早期に診断することは、ご家族にこの病気の方がいる以外は絶対に無理でした。
ただ、鹿児島県ではちょうど1年前、去年の8月から希望者のみで有料ですが、重症複合免疫不全症の新生児マススクリーニング検査が始まりました。

二見いすず: 「鹿児島県では」ということは、全国一斉に始まった検査ではないのでしょうか?

西川拓朗Dr: はい。
鹿児島県は全国的にみると、早い開始となります。
今のところ鹿児島県で産まれて、この検査までしている新生児は、およそ74%です。
産まれた産婦人科でできる検査なので、1人でも多くの赤ちゃんにこの検査を受けていただきたいです。

二見いすず: 先生のところにも、この検査で疾患が診断された赤ちゃんが治療に来られたことがあるのでしょうか?

西川拓朗Dr: はい。
産まれて8日目にこの検査で疾患が判明し、その後入院され、造血細胞移植などの治療も行ない、順調な経過です。

二見いすず: それを聞いて安心しました。
早めに分かってよかったですね。

西川拓朗Dr: 九州で、この疾患に対して移植をしているのは、鹿児島大学病院小児科や九州大学病院小児科が中心です。

二見いすず: つまり鹿児島に住んでいる赤ちゃんは、近くで治療することができるんですね。

西川拓朗Dr: はい、そうです。
鹿児島大学病院では、重症複合免疫不全症の現在唯一の根治療法である、造血幹細胞移植を行うことができます。
まずはそれを診断するための新生児マススクリーニング検査を受けることを強くおすすめします。
お近くにお子さんが生まれたご家庭がありましたら、ぜひお勧めください。

二見いすず: 分かりました。
今月は免疫不全症について、鹿児島県医師会の西川拓朗ドクターに貴重なお話をしていただきました。
西川さん、ありがとうございました。

西川拓朗Dr: ありがとうございました。