健康トピックス |
小児嘔吐下痢症
◎小児嘔吐下痢症とは冬になると毎年嘔吐を伴う小児の消化不良症が流行します(ただし、その年によって 発症の時期が多少ずれたり、流行の規模の違いがあったりします)。乳児の場合では、し ばしば便の色が白っぽくなることから「白色便性下痢症」などと呼ばれることもあります。 これは主にヒトロタウイルス(HRV)と呼ばれる直径70mm(10万分の7mm)く らいのウイルス(写真)に感染して発症する乳児の急性胃腸炎のことです。便の色が白っ ぽくなるのは、十二指腸の粘膜にHRVが感染して炎症を起こし、胆汁が一時的に十二指 腸に排出されなくなるからです。 ふつう、数日で回復しますが、赤ちゃんによっては嘔吐と下痢で体液を急激に失うため、 脱水が進行し、けいれんやショックに陥り、手当てを間違うと不幸な結果になることもあ ります。 最近では栄養事情がよいために赤ちゃんも丈夫になり、医療の水準も高くなったので、 これで命を落とすようなことは、ほとんどなくなりました。しかしできるだけ早く適切な 治療が必要ですから、素人療法は禁物です。もし乳児や小児に嘔吐、下痢、白っぽい便が みられるときは、小児の生理がわかっている小児科医に受診することをおすすめします。
◎下痢がない場合もあります。激しい嘔吐が半日くらい続き、下痢は必ずしもあるとは限らない場合もあります。 このような症状は2歳以上の幼児や学童によくみられ、いわば流行性嘔吐症というべきも のでしょう。これはHRVによることもありますが、小型球型ウイルス(SRSV)と総 称されるカリシウイルスを中心とした種々の胃腸炎ウイルスが原因です。このSRSVの 中には、肝炎を起こすウイルスもあります。
◎予防には手洗いが一番小児嘔吐下痢症は、HRVやSRSVに感染した食物や飲料水を口にしたとき、 あるいはHRVやSRSVが自分の手について、それが口の中に入ったときに起こります。 これらは保育園や幼稚園、学校といった小児の集団生活の場で爆発的な流行を起こすこと があり、その様相はまるで集団食中毒のようになることもあります。 これを予防するには、ふだんからていねいな手洗いを心掛け、タオルは共用しない、な どの工夫が必要です。とくに、オムツを扱うお母さんや保母さん方は手洗いをまめにする ようにしましょう。
日医ニュース(24時間の医学No.592)
指導・川崎市立川崎病院小児科部長 武内 可尚