健康トピックス  
    
冷 え 症 状

 

◎「冷え症状」は病気?

 いつも手足や腰が冷たいと訴える「冷え症状」は、もっぱら女性にみられ、とくに更年期に多い症状ですが、若い女性でも産後を中心に起こります。
 「冷え症状」の原因の多くは、自律神経のうちの血管運動神経失調によって手足や腰の抹梢血管が縮み、血液の流れが少なくなるために起こるものと考えられます。「冷え症状」ではちょっと病院には行きにくいものですが、真夏や十分に暖房されている室内でも身体の一部が冷たく感じたり、さらに厚着をしたり厚手の靴下をはいてもなお冷たく感じたりして、日常の生活に支障をきたすようなら、病的なものといってもよいでしょう。

◎対策は保温と栄養バランス

 「冷え症状」をやわらげるには身体を冷やさないように衣服や暖房などを工夫したり、栄養バランスのよい食事をとって血流をよくすることが必要です。少し様子を見た後、なお支障を感じるようなら、“体質”とあきらめずに医師の診察を受けてみましょう。
 「冷え症状」は日本人をはじめとする東洋人に多くみられ、西洋人にはあまり起こらないので、これまで西洋医学では病気らしい病気とは認知されていなかったようです。そのせいか、「冷え症状」の治療には現在のところ漢方薬が主流を占めています。
 このほかにホルモン補充療法が万能薬のように扱われている部分もありますが、有効でない症状もあるので、むしろ手足の血液の循環をよくするビタミンEや、自律神経のバランスをとる薬が治療に用いられています。

◎ほかの重大な病気がかくれていることも・・・

 「冷え症状」のほかに、指先が冷たくなり、しびれたりする場合にはレイノー病が疑われます。また、動悸や息切れがあると貧血が考えられ、動脈硬化によって血流が少なくなっている場合や低血圧の時も「冷え症状」を感じることがあります。
 改善する努力をしても「冷え症状」がなかなか消えないようなら、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

《「冷え性」か「冷え症」か》

 「冷え性」はもともと「冷えやすい」という体質的なものを指し、「冷え症」は「冷えている」という症状を指します。したがって、「冷え性」の人は「冷え症」を訴えることが多いといえます。また「冷え症」は本来病気の名前ではありませんが、薬物投与を必要とするようなひどい「冷え症」は病的ですので、ほとんど疾患名(病気の名前)に近いものとなります。

日医ニュース(24時間の医学No.606)
指導・慶應義塾大学医学部産婦人科助教授 太田 博明