健康トピックス  

腎・心・脳を守るために-“慢性腎臓病”への取り組み-



腎臓の働きが衰えると

 腎臓は運ばれてきた血液をろ過して、有害物質や老廃物を尿として体外に出すことが主な役割です。
その働きが衰えて腎不全になると、人工腎臓(血液透析)で血液をろ過しなければなりません。
わが国では透析の患者さんが毎年約1万人のペースで増え続け、2010年には30万人を突破すると言われています。
 腎臓が悪くなると透析が必要になるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中の頻度が増加します。

悪化の目安

 一方、軽度の腎臓病でもタンパク尿などの異常がある場合、あるいは腎機能を示すGFR(糸球体ろ過量)の値が一定以下の場合に、末期の腎不全になりやすく、また、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくなることが分かってきました。
 腎臓病は自覚症状に乏しいので、気がつくと透析が必要なほど悪化していることもあります。
生活習慣病も腎臓を悪化させる原因となり、腎機能が低下している人は多くなっています。
 そこで、透析や腎移植を受けている人も含めて、慢性的な経過で腎臓に異常のある人を、それぞれの腎臓病の病名にかかわらず「慢性腎臓病(CKD)」として大きく取り扱うという動きが出てきました。
その進行度に応じて適切な対策を行うことが目的です。
2002年に米国腎臓財団が慢性腎臓病の定義(CKD分類)を提唱して、現在では、わが国でもその分類が使われるようになっています。
早期診断、早期治療のために

 慢性腎臓病として早期に診断・治療ができれば、透析に至る時期を先に延ばしたり、心筋梗塞、脳梗塞などを予防することが可能になります。
慢性腎臓病の患者さんがかかりつけ医を受診することも多いので、日本人向けの「CKD診療ガイド」が日本腎臓病専門医とかかりつけ医が連携して慢性腎臓病の診断や治療に当たっていくことが期待されています



指導:日本医科大学腎臓内科 教授 飯野 晴彦
企画:日本医師会
協賛:武田薬品工業株式会社