2004.8.28
第70回放送分『鼻』 ゲスト:伊東祐久ドクター


二見いすず: 今週も鼻に関連する病気について伺って参ります。
先週に引き続きお話は、耳鼻咽喉科がご専門の鹿児島県医師会の伊東祐久(いとう すけひさ)ドクターに伺います。
伊東さんどうぞよろしくお願い致します。

伊東祐久Dr: よろしくお願い致します。

二見いすず: 伊東さん、今週は睡眠時無呼吸症候群について詳しくお話をいただけるということなんですが、まずこれに関連していびきはどうして起こるかというお話からお願い致します。

伊東祐久Dr: はい。
いびきは空気の通り道の上気道というところが狭くなり、呼吸をするときに上気道の粘膜が擦れて出てくる摩擦音です。
いびきの原因としては、鼻やのどの形態異常。
例えば、いわゆる「のどちんこ」が大きかったり、扁桃やアデノイドの肥大があったり舌や軟口蓋が大きかったりしますと空気の通り道が狭くなりいびきをかきやすくなります。
その他にもアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの鼻詰まりを起こす病気が原因となることもあります。
また、肥満になりますとのど全体に脂肪がつき、上気道が狭くなるためいびきをかきやすくなります。
その他、過度の飲酒、あるいは代謝障害・中枢神経系疾患などの全身的な原因でも起こります。
いびきをかいているうちに、上気道が閉塞してしまいますと無呼吸が出現します。
これが一定以上生じると睡眠時無呼吸症候群となります。
無呼吸というのは、10秒間の呼吸の停止とされていますがそれが一時間に5回以上記録される場合は病的と考えられます。
この病気が非常に重要視される理由は生活習慣病と密接に関連しているからです。

二見いすず: 睡眠時無呼吸症候群では、いびき・無呼吸の他にどのような症状があるのでしょうか。

伊東祐久Dr: 朝起きたときの頭痛とか、不眠とこれによる寝不足が起こります。
また、いびきをかくときは空気の抵抗が増えるため、通常の呼吸が出来ず酸欠状態になるので息苦しさを感じ、そのために心臓や循環器への負担が増えてしまいます。
それから逃れるために睡眠中に体位を変えようとして寝相が悪くなります。
また睡眠が浅くなるので、慢性の睡眠不足があり昼間でも居眠りをしやすくなってしまいます。
車の運転中に居眠りをして事故を起こすという危険も出てくるわけですね。

二見いすず: はい。
こういうことを本人が気が付かないということもありまして大変危険ですよね。
大変怖い病気だということがよくわかりましたが、では、診断に必要な検査、そして治療について教えていただけますか。

伊東祐久Dr: はい。
まず、いびきや無呼吸の状態がどの程度なのかきちんと把握します。
そして全身や局所、特に鼻やのどの診察をして原因を調べます。
睡眠中の状態を調べるためには、一泊入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査。
ポリソムノグラフィーといいますが、この検査で睡眠中の脳波や心電図、呼吸の状態・いびきの音などの記録を行います。
治療ですけれども、生活習慣の改善、外科的治療・内科的治療・歯科装具による治療に大別されます。
外科的治療としては、気道閉塞の原因がアデノイドや扁桃肥大の場合は、この手術を行います。
のどの広さを広げるために口蓋垂軟口蓋咽頭形成術などの外科的な手術が必要になることもあります。
また内科的治療としてよく行われるのが鼻CPAP(シーパップ)療法。
これは経鼻的持続陽圧呼吸療法といいますが、これは鼻マスクから上気道に陽圧の空気をかけ続けることで軟口蓋や舌を押し上げて、気道を広げ無呼吸を防ぐ治療で有効性、安全性、即効性が高い治療法であります。

二見いすず: いろいろ伺いましたがいずれにしてもちょっと気になることがあるという方は早めに専門医を尋ねていただきたいですね。

伊東祐久Dr: そうですね。

二見いすず: 貴重なお話を伊東さんどうもありがとうございました。

伊東祐久Dr: どういたしまして。

二見いすず: お話は、鹿児島県医師会の伊東祐久ドクターでした。