2007.3.3
第201回放送分『耳』 ゲスト:鯵坂孝二ドクター


二見いすず: 3月3日は『耳の日』。
そこで今月は、耳に関するお話を鹿児島県医師会の鯵坂孝二(あじさかこうじ)ドクターに伺ってまいります。
鰺坂さん、よろしくお願いいたします。

鯵坂孝二Dr: はい。まずは「痛みを伴う耳の病気」についてお話しましょう。

二見いすず: 耳が痛い、といえば、まず頭に浮かぶのは「急性中耳炎」でしょうか。

鯵坂孝二Dr: そうですね。
でも、その前に、耳に炎症があって耳を痛く感じる場合と、耳そのものに問題があるのでなくて、耳の周囲に炎症があって耳に痛みを感じている場合があるということを知っておいてください。

二見いすず: つまり、耳が痛いと感じていても、実は耳には病気は無くて、耳の周囲の痛みを、耳が痛いと勘違いしている場合もある、という事ですね。

鯵坂孝二Dr: そうです。
鼻の奥や扁桃腺の炎症、虫歯や『おたふく風邪』の時の様な耳下腺の炎症などでも耳に痛みを感じる場合があります。
そして、耳に炎症がある場合、耳の穴の一番奥に鼓膜が在る訳ですが、穴から鼓膜までの皮膚の炎症を『外耳炎』と言い、鼓膜から内側の炎症を『中耳炎』と言います。

二見いすず: わかりました。
よく、耳に水が入って『中耳炎』になる、と言いますが・・・。

鯵坂孝二Dr: はい、慢性中耳炎で鼓膜に穴が開いている場合はその可能性はありますが、これまで耳の病気を起こした事が無い人にとっては、耳の穴は行き止まりになっていますので、耳の外から水が入って『中耳炎』になるという事はありません。
耳に水が入っておかしくなるのは、耳垢(みみあか)がふやけて耳の穴を塞いでしまったり、外耳道に傷がありそこが化膿した場合です。

二見いすず: なるほど、そうなんですね。

鯵坂孝二Dr: はい。鼓膜の内側は、耳管(じかん)という管(くだ)で鼻の奥につながっています。
その耳管を通して鼻や喉の細菌やウィルスなどが鼓膜の内側、すなわち中耳腔に入り込み、そこで化膿して『中耳炎』を起こす訳です。
ですから、風邪をひいたときなど、あまり強く鼻をかむと、細菌やウィルスが鼓膜の内側に入り込み、炎症で膿が溜まってしまう恐れがあります。
鼓膜が膨れ上がるぐらい溜まってくると、引っ張られた鼓膜で、耳の痛みは強くなり、熱も出て来るという訳です。

二見いすず: では、『外耳炎』の場合の痛みにはどんな特徴があるんでしょうか?

鯵坂孝二Dr: 『外耳炎』は耳たぶを引っ張ると痛みが強くなります。

二見いすず: それは、何故ですか?

鯵坂孝二Dr: 耳たぶを引っ張ることによって、炎症のある外耳道の皮膚も引っ張られるためです。
それに比べて『中耳炎』の場合の炎症の場所は、耳の穴の一番奥の鼓膜の内側ですから、耳たぶを引っ張ったぐらいでは、ほとんど影響が出ないという訳です。

二見いすず: よくわかりました。
ありがとうございました。