2007.3.17
第203回放送分『耳』 ゲスト:鯵坂孝二ドクター


二見いすず: 今月は、耳の病気について、鹿児島県医師会の鯵坂孝二(あじさかこうじ)ドクターにお話をうかがっています。
さて、先週までは『急性中耳炎』について伺いました。
『中耳炎』には急性の他にどんなタイプがあるのでしょうか?

鯵坂孝二Dr: まず急性に対して慢性の中耳炎があります。
『急性中耳炎』を何度も繰り返す内に、炎症が慢性的に中耳腔に存在するようになり、やがて鼓膜に孔が開いてしまうのが『慢性中耳炎』です。

二見いすず: そうすると、鼓膜の孔からは膿が出てくるのですか?

鯵坂孝二Dr: はいその通りですが、常に出るという訳ではなく、炎症が治まった時には、比較的乾いた状態になります。
また、炎症が鼓膜の内側の粘膜表面だけで無く、骨にまで及び、少しずつ骨が破壊されていくタイプの『慢性中耳炎』もあります。

二見いすず: 骨にまでとは影響するとはちょっと怖いですね。

鯵坂孝二Dr: 最近は良い抗生剤も出来て、患者さんの健康意識も高くなって来たので、以前に比べるとひどい状態のものは少なくなりました。
しかし年齢や炎症の状態にもよりますが、今のところ『慢性中耳炎』を根本的に治すのは、手術で悪い部分を骨ごと削り取り、鼓膜の孔を塞いで、音が伝わるようにする、という事になります。

二見いすず: 少しでも早く治療するのが大切ですね。
その他にどのような『中耳炎』がありますか?

鯵坂孝二Dr: 水が滲み出てくる、と書いて『滲出性中耳炎』というものがあります。

二見いすず: どの様な症状が出るのでしょうか?

鯵坂孝二Dr: 鼓膜の内側にやや粘り気のある液体が溜まり、鼓膜の動きが制限されるため聞こえが悪くなります。
小学校低学年児以下の子供や、老人に多く、『急性中耳炎』のようには強い症状が出ないため、発見が遅れる事があるのが問題です。

二見いすず: それは困りますね。
どうしたらよいでしょうか?

鯵坂孝二Dr: 呼び掛けても返事がすぐには返って来ない、ボーっとしている事が多い、テレビを見るときの音量が大きい、声が大きくなったなどの症状がある時には、耳鼻科の受診をおすすめします。

二見いすず: 良い治療法がありますか?

鯵坂孝二Dr: はい、鼓膜に切開を加え、なかの滲出液を吸い出したり、このとき開けた孔に、穴の開いたチューブを埋め込んでしまう方法があります。
そして、通院時には鼻の方から耳に向かって空気を送り出す『通気』という処置をして、鼓膜の内側に溜まった滲出液を、チューブを介して耳の外に流し出してやります。

二見いすず: 患者さんにとって大変なような気もしますが・・・・

鯵坂孝二Dr: チューブの埋め込みは、外来でも鼓膜の麻酔をしてから出来ます。
鼓膜に孔が開いた状態が続く事になりますが、炎症がひどくなければ、プールの水面で泳ぐ分には何の支障もありません。
入浴・洗髪時にも、普通に耳に水が入らないように気を付けるだけで充分です。

二見いすず: それですと普通の生活ができるということですね。
お話は鯵坂孝二ドクターでした。
ありがとうございました。