二見いすず: | 今月は、耳の病気について、鹿児島県医師会の鯵坂孝二(あじさかこうじ)ドクターにお話をうかがっています。 さて、先週までは『急性中耳炎』について伺いました。 『中耳炎』には急性の他にどんなタイプがあるのでしょうか? |
鯵坂孝二Dr: | まず急性に対して慢性の中耳炎があります。 『急性中耳炎』を何度も繰り返す内に、炎症が慢性的に中耳腔に存在するようになり、やがて鼓膜に孔が開いてしまうのが『慢性中耳炎』です。 |
二見いすず: | そうすると、鼓膜の孔からは膿が出てくるのですか? |
鯵坂孝二Dr: | はいその通りですが、常に出るという訳ではなく、炎症が治まった時には、比較的乾いた状態になります。 また、炎症が鼓膜の内側の粘膜表面だけで無く、骨にまで及び、少しずつ骨が破壊されていくタイプの『慢性中耳炎』もあります。 |
二見いすず: | 骨にまでとは影響するとはちょっと怖いですね。 |
鯵坂孝二Dr: | 最近は良い抗生剤も出来て、患者さんの健康意識も高くなって来たので、以前に比べるとひどい状態のものは少なくなりました。 しかし年齢や炎症の状態にもよりますが、今のところ『慢性中耳炎』を根本的に治すのは、手術で悪い部分を骨ごと削り取り、鼓膜の孔を塞いで、音が伝わるようにする、という事になります。 |
二見いすず: | 少しでも早く治療するのが大切ですね。 その他にどのような『中耳炎』がありますか? |
鯵坂孝二Dr: | 水が滲み出てくる、と書いて『滲出性中耳炎』というものがあります。 |
二見いすず: | どの様な症状が出るのでしょうか? |
鯵坂孝二Dr: | 鼓膜の内側にやや粘り気のある液体が溜まり、鼓膜の動きが制限されるため聞こえが悪くなります。 小学校低学年児以下の子供や、老人に多く、『急性中耳炎』のようには強い症状が出ないため、発見が遅れる事があるのが問題です。 |
二見いすず: | それは困りますね。 どうしたらよいでしょうか? |
鯵坂孝二Dr: | 呼び掛けても返事がすぐには返って来ない、ボーっとしている事が多い、テレビを見るときの音量が大きい、声が大きくなったなどの症状がある時には、耳鼻科の受診をおすすめします。 |
二見いすず: | 良い治療法がありますか? |
鯵坂孝二Dr: | はい、鼓膜に切開を加え、なかの滲出液を吸い出したり、このとき開けた孔に、穴の開いたチューブを埋め込んでしまう方法があります。 そして、通院時には鼻の方から耳に向かって空気を送り出す『通気』という処置をして、鼓膜の内側に溜まった滲出液を、チューブを介して耳の外に流し出してやります。 |
二見いすず: | 患者さんにとって大変なような気もしますが・・・・ |
鯵坂孝二Dr: | チューブの埋め込みは、外来でも鼓膜の麻酔をしてから出来ます。 鼓膜に孔が開いた状態が続く事になりますが、炎症がひどくなければ、プールの水面で泳ぐ分には何の支障もありません。 入浴・洗髪時にも、普通に耳に水が入らないように気を付けるだけで充分です。 |
二見いすず: | それですと普通の生活ができるということですね。 お話は鯵坂孝二ドクターでした。 ありがとうございました。 |