2007.3.24
第204回放送分『耳』 ゲスト:鯵坂孝二ドクター


二見いすず: 今月は、耳の病気について、鹿児島県医師会の鯵坂孝二(あじさかこうじ)ドクターにお話をうかがっています。
今週と来週は耳の聞こえが悪い状態『難聴』についてお願いいたします。

鯵坂孝二Dr: 『難聴』にはいくつかタイプがありまして、聞こえの神経そのものが悪くて聞こえない場合を感じる音と書いて『感音性難聴』と言い、音が伝わりにくい状態のため聞こえにくくなっている場合を伝える音と書いて『伝音性難聴』と言います。
両方の難聴がある場合は『混合性難聴』と言います。

二見いすず: 音が伝わりにくい状態とは、どんな場合がありますか。

鯵坂孝二Dr: 単純に耳の穴が耳垢や異物で塞がっている場合があります。
耳掃除をしていてこれらを耳の穴の奥の方に押し込んでしまったり、水や汗などを吸った耳垢がふやけて膨らみ、耳の穴を完全に塞いでしまう場合です。

二見いすず: 耳栓をしたのと同じ状態と考えていいですね。

鯵坂孝二Dr: はい。
次に、鼓膜に孔が開いた場合が考えられますが、『慢性中耳炎』で大きな鼓膜穿孔が出来ると『伝音声難聴』になります。

二見いすず: 他にはどの様な場合がありますか?

鯵坂孝二Dr: 『急性中耳炎』や『滲出性中耳炎』では、鼓膜の内側に溜まった液体が鼓膜の動きを抑制するために聞こえが悪くなります。

二見いすず: その場合は、鼓膜切開をして溜まった液体を出すと聞こえは良くなる訳ですね。

鯵坂孝二Dr: そうですね。
ところで、鼓膜と聞こえの神経の間には、「耳小骨」と言って非常に小さな骨が3個つながっています。
音は空気の振動ですから、これが鼓膜の振動となり、耳小骨がテコの原理で振動を効率良く増幅して聞こえの神経に伝えていきます。
『慢性中耳炎』では、鼓膜穿孔だけでなく、この耳小骨が破壊される場合があり、その場合は難聴がひどくなります。

二見いすず: 飛行機が下降する時など、気圧の関係で、耳が詰まって聞こえが悪くなることがありますが、これは何故でしょうか?

鯵坂孝二Dr: 耳は、耳の管(くだ)と書いて耳管(じかん)と呼ばれる管で鼻の奥へとつながっていて、鼓膜がなければ鼻から耳へ空気が抜ける事になります。
この耳管は普段は閉じていて、物を飲み込んだり大きく口を開けた時に開きます。
飛行機が上昇する時は、鼓膜の内側の気圧が高くなるので、耳管を通して空気が鼻のほうへ抜けます。
下降する時は、鼓膜の内側の気圧は低くなるので、今度は空気が耳管を通して鼻から耳の方へ入り込もうとする訳です。

二見いすず: 鼓膜が引っ張られた状態にあるため、動きが制限されて、聞こえにくくなるのですね。

鯵坂孝二Dr: そうです。
ところが、この耳管はバルブの様な働きがあり、空気を鼻の方へは吐き出しやすいのですが、耳の方へは入りにくいという性質があります。
飛行機が下降する時に耳が痛くなるのはこの為で、飛行機の中で、飴玉を配るのは、だ液を飲み込む運動をさせて耳管を開かせる為という科学的な理由があるんですよ。

二見いすず: よくわかりました。
鯵坂さん、ありがとうございました。