『アルコール依存症』 ゲスト:竹元隆洋ドクター



二見いすず: 今月のドクタートークは、「アルコール依存症」について、鹿児島県医師会の竹元隆洋(たけもとたかひろ)ドクターにお話を伺っています。
竹元さん、よろしくお願いいたします。

竹元隆洋Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 最終日の今日は、「アルコール依存症」の治療についてお話を伺います。
先週までのお話で、「アルコール依存症」は、病気と認識されにくいということでした。
つまり、自ら病院に行くということはほとんどないということですよね。

竹元隆洋Dr: 実際、過剰な飲酒で、脳が麻痺して、暴力事件を起こしたり、体調が悪化して運ばれたりということから、病院へ行き、アルコール依存症だと診断されて、治療に移るケースが多いのです。

二見いすず: トラブルになる前に気づいて、病院で治療を受けていただけたらいいのでしょうが・・・。
では、具体的には病院ではどんな治療が行われるのでしょうか。

竹元隆洋Dr: はい。
「アルコール依存症」の治療は、たった一つ、断酒をしていただくことに尽きます。

二見いすず: お酒を減らすのではなく、一切止めるということですか。

竹元隆洋Dr: はい。
一度アルコール依存症になると、脳がアルコールの快感をインプットしてしまっています。
それで、入院してお酒を断ち、退院して「ちょっとなら、、」とひと口飲んでしまったら、ガソリンにマッチを投げ込むように、マッチ一本火事のもと、となって一気にアルコールへの欲求が噴出して、飲むことを我慢することはできず、せっかくの努力がもとのもくあみになってしまうのです。

二見いすず: では、これからの人生でお酒を一滴も飲まないということですね。

竹元隆洋Dr: そうです。
私たちは、ちょっと強い言い方ですが「お酒と死別する」と表現します。
今後一切関わらないという決意をもたなければ、アルコール依存症から抜け出すことはできません。

二見いすず: 分かりました。

竹元隆洋Dr: ただ、アルコール依存症の方は、何よりも好きなお酒を断つという治療は、かなり抵抗されます。
しかし、ご自分の生活や身体、精神状態を冷静に振り返っていただき、「このままではいけない」ということを認識していただいてから、断酒へ挑戦していただきます。

二見いすず: なるほど。
自分の状態を冷静に見ることが大切ですね。

竹元隆洋Dr: 過去の例を見ますと、アルコール依存症の患者さんのいるご家庭の子どもは、アルコール依存症になる確率も高いと言われております。
親が朝から酒を飲み、暴力をふるうという光景が当たり前になってしまっているからでしょうか。
このような世代連鎖を断ち切るためにも、患者さんたちには、強い意志で治療に取り組んでいただきたいと思います。

二見いすず: よく分かりました。
アルコールにはよい面と悪い面があることを知り、過剰な飲酒は、「アルコール依存症」という恐ろしい病気へつながっているということを認識することが大切ということですね。
竹元さん、4週にわたり貴重なお話ありがとうございました。

竹元隆洋Dr: ありがとうございました。