二見いすず: 今月は、アルコール依存症について、鹿児島県医師会の竹元隆洋(たけもとたかひろ)ドクターにお話を伺っています。
竹元さんよろしくお願いいたします。

竹元隆洋Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今日は、アルコール依存症の治療についてお願いします。

竹元隆洋Dr: はい。
まず、アルコール依存症の患者さんは、自分が依存症であることを認めないという特徴があります。病院に来るのは、暴力事件を起こしたり、合併症を起こして体調が悪化して運ばれたりしてからというケースがほとんど。
そこでアルコール依存症だと診断されて、ようやく治療がはじまるケースが多いのです。

二見いすず: なるほど。
では、家族の方などが注意しておくのも大切ですね。
アルコール依存症は、どんな治療が行われるのでしょうか。

竹元隆洋Dr: はい。
アルコール依存症の治療は、ただ一つ、断酒をしていただくことに尽きます。

二見いすず: 断酒、ですか。
つまり、お酒を一切止めるということでしょうか。

竹元隆洋Dr: そうです。
減らすのではなく、一滴も飲まないという断酒です。
節酒は予防のため、断酒は治療のために不可欠です。
お酒に今後一切関わらないという決意をもたなければ、アルコール依存症から抜け出すことはできません。

二見いすず: 一滴も飲まないということですか。

竹元隆洋Dr: はい。
アルコール依存症になると、脳にアルコールを求める回路ができてしまっています。
治療中に一滴でもアルコールを口にしたら、その回路が一気に目覚め、飲酒欲求が爆発してしまうのです。

二見いすず: なるほど・・・。

竹元隆洋Dr: 極端なようですが、なら漬けも駄目、みりんが入った料理を食べただけでも、同じことが起こってしまうのです。
また、今年大ヒットしたノンアルコールのビール風味飲料も、飲酒運転防止などには大きな役割を果たしていると思いますが、アルコール依存症の患者さんにとっては、アルコールそのものを飲むのと同じなのです。

二見いすず: でもアルコールは入っていないですよね・・・。

竹元隆洋Dr: そうですね。
でも、ビールそっくりのノンアルコール飲料を飲んだとき、脳はアルコールを飲んだと勘違いしてしまうのです。
そして、一口でアルコールを求める回路が一気に目覚め、飲酒欲求に火がつき、断酒治療が元の木阿弥になってしまうのです。

二見いすず: なるほど。だから注意が必要なのですね。

竹元隆洋Dr: そうですね。
いろいろ怖いことを申し上げましたが、アルコール依存症は、きちんと断酒して治療をすれば必ず回復でき、アルコールには関係のない人生を生きることができます。
依存症の方は、医療機関でサポートを受けながら、強い意志を持って、回復を目指していただきたいと思います。

二見いすず: 竹元さん、4週にわたり貴重なお話をありがとうございました。

竹元隆洋Dr: ありがとうございました。