2015.3.28 第621回放送分 『胃がん』 ゲスト:帆北修一ドクター


二見いすず: ドクタートークは、「胃がん」について鹿児島県医師会の帆北修一(ほきたしゅういち)ドクターにお話を伺ってまいります。
帆北さん、よろしくお願いいたします。

帆北修一Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今週は胃がんの治療後の生活についてお話をお願いいたします。

帆北修一Dr: はい。
胃がんの治療後、一番大きく変わるのは食生活です。
胃の一部または全部を切除した場合は、手術後の後遺症と付き合うことになるため、担当医、看護師、栄養士などと相談しながら、自分なりに対応を見つけていくことが大切です。

二見いすず: 胃の手術後には、どのような後遺症があらわれるのでしょうか。

帆北修一Dr: 胃の切除後には、これまで胃の中を通っていた食べ物が直接または短時間で腸に流れ込むために、さまざまな症状が起こることがあり、これをダンピング症候群といいます。
このダンピング症候群以外にも、逆流性食道炎、貧血、骨粗しょう症などの症状があらわれる場合もあります。

二見いすず: 治療後はどれくらいで社会復帰できるのでしょうか。

帆北修一Dr: 年齢やその方の体力によっても異なるのですが、社会復帰の目安は、治療後の食事の調整ができ、ある程度まとまった量の食事がとれるようになった時と考えるといいでしょう。
内視鏡治療の場合は治療後2、3週間以内に復帰できることが多いようです。
胃切除を行った場合、1、2ヶ月間は体に負担の多い仕事は控えてください。
手術後に抗がん剤治療を行う場合は、担当医とよく相談をしてください。

二見いすず: 日常生活で気をつけておきたいポイントはありますか?

帆北修一Dr: まず食事ですが、1日分を5回くらいに分けるつもりで、少しずつ、よくかんで、時間をかけて食べてください。
繊維質の多い野菜や海藻類、きのこ類は細かく刻む、よく煮てやわらかくするなど、消化しやすいように調理しましょう。

二見いすず: わかりました。
運動やスポーツはいかがでしょうか。

帆北修一Dr: 退院後は無理をしない程度に体を動かして、体力の維持に努めることをお勧めします。
ただし、胃切除後の場合、術後3ヶ月間は腹筋を使う激しい運動は控えてください。
退院後に痩せたと悩む患者さんも少なくありませんが、あまり心配することはありません。

二見いすず: 手術後も医療機関を定期的に受診して、自分の体調をきちんと把握しておくことも大切ですね。

帆北修一Dr: はい、おっしゃる通りです。
術後の後遺症やハンディに向き合う支えが欲しいという方には、胃を切除した人の患者会「アルファ・クラブ」という全国組織があります。

二見いすず: 一人で悩まずに、医療者や家族にも積極的に相談してもらいたいですね。

帆北修一Dr: はい。
胃がんは早期の状態で見つかれば、取り除くことによって治る可能性の高いがんです。
進行した状態でも、手術・薬物療法によって完治あるいは生存期間を長くできる可能性があります。
一人で悩まずに、専門病院によく相談されて、前向きに対応していただきたいと思います。

二見いすず: よく分かりました。
貴重なお話をありがとうございました。
お話は鹿児島県医師会の帆北修一(ほきたしゅういち)ドクターでした。

帆北修一Dr: ありがとうございました。