2015.5.9 第627回放送分 『認知症』 ゲスト:黒野 明日嗣ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「認知症」について、鹿児島県医師会の黒野明日嗣(くろのあすつぐ)ドクターにお話を伺っております。
黒野さん、今週もよろしくお願いいたします。

黒野明日嗣Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、認知症とは認知機能の低下によって、日常生活や社会生活に支障をきたすようになる病気だと伺いました。
今週は認知症の症状についてお話をお願いいたします。

黒野明日嗣Dr: はい。
認知症には、中核症状と、行動・心理症状という2つの症状があります。

二見いすず: はい。
2つの症状があるということで、まず中核症状についてお願いいたします。

黒野明日嗣Dr: 中核症状とは、脳の神経細胞が壊れることによって直接発生する症状です。
認知症の方ならどなたにでも現れる一般的な症状といえます。

二見いすず: 中核症状には、具体的にはどのような症状があるのでしょうか。

黒野明日嗣Dr: 具体的には、直前に起きたことも覚えられなくなる、あるいは忘れてしまうという記憶障害、いつ、どこかが分からなくなる見当識障害、道筋をたてた思考ができなくなる判断力の障害、予想外のことに対処できなくなる問題解決能力の障害、計画的に物事を実行できなくなる実行機能障害などがあります。

二見いすず: よく分かりました。
では、もう一つの行動・心理症状とはどのような症状でしょうか。

黒野明日嗣Dr: はい。
行動・心理症状は英語でBPSDともいわれまして、周囲の人との関わりの中で起こる症状です。
本人がもともと持っている性格や人間関係、認知機能の低下による環境や体の変化などが複雑に絡み合って起こるため、症状は人それぞれ異なります。

二見いすず: そうなんですね。
具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。

黒野明日嗣Dr: はい。
財布や物を盗まれたという妄想を抱いたり、幻覚・幻聴があったり、徘徊してしまう、暴言・暴力、抑うつ気分などもあります。

二見いすず: 家族や周囲の人は、本人にどう接したらいいのかと思い悩むことも多いのでしょうね。

黒野明日嗣Dr: 最初に症状に気付き、誰よりも不安になって、苦しみ、悲しんでいるのは、実は本人なのです。
まずはそれを理解してあげましょう。
認知症の本人に自覚がないというのは大きな間違いです。

二見いすず: 家族や周囲の人が悩んでいる以上に、本人がつらい思いをしているということですね。
ひとくちに認知症といっても、病気の種類によって症状や対応が異なるのでしょうか。

黒野明日嗣Dr: はい。
例えば、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症では、症状や進行、対応が異なります。
特徴をよく知って、家族の生活や介護の計画に役立てるのも大切です。

二見いすず: よく分かりました。
来週は認知症の原因や種類、治療などについて詳しくお話を伺ってまいります。
お話は鹿児島県医師会の黒野明日嗣(くろのあすつぐ)ドクターでした。
ありがとうございました。

黒野明日嗣Dr: ありがとうございました。