2015.5.23 第629回放送分 『認知症』 ゲスト:黒野 明日嗣ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「認知症」について、鹿児島県医師会の黒野明日嗣(くろのあすつぐ)ドクターにお話を伺っております。
黒野さん、今週もよろしくお願いいたします。

黒野明日嗣Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、認知症にもいろいろな種類があり、一般的には完治は難しいものの、治療やリハビリテーションによって進行を遅らせたり、症状を軽減させることができるとお伺いしました。

黒野明日嗣Dr: はい。
そうですね。
認知症にもさまざまな種類があるので、症状があったら、どのタイプの認知症なのかを医療機関できちんと診断してもらうことが大切です。

二見いすず: そして、家族や周囲の人が認知症という病気を正しく理解することが何よりも大切だということですね。

黒野明日嗣Dr: はい、まさにおっしゃる通りです。
以前もお話しましたが、認知症には周囲の人との関わりの中で起きるBPSDといわれる症状があります。
実はこのBPSDの多くが家族や介護者などの身近な人との間で問題となり、重症化しやすいということが分かってきました。

二見いすず: それはどういうことなんでしょうか。

黒野明日嗣Dr: 認知症の人の多くは記憶障害など自分の症状に不安を感じています。
また、軽度の段階でも言葉がタイミングよく話せなくなるので、家族間の温かい会話が激減します。

二見いすず: それはちょっとつらいですね。

黒野明日嗣Dr: 心が温まる会話をなくした状態で、できなくなったことを指摘されると、認知症の人は「叱られた」と受け止めるんです。

二見いすず: なるほど。
“しっかりして”と励ましのつもりでかけた言葉が認知症の患者さんにとっては、叱られているように感じられるということですね。

黒野明日嗣Dr: はい、その通りです。
認知症の人は、寄る辺のない状態で叱られ続けるというストレスに耐えなければいけません。
ですから、周囲のちょっとした言葉や態度によって妄想や暴言、暴力などが引き起こされてしまうのです。

二見いすず: よく分かりました。
認知症の患者さんに対してはご本人のつらさを理解し、さりげなく温かい声掛けを行うことが大切なのですね。

黒野明日嗣Dr: はい。
会話は本当に大切です。
しかし、家族にも感情があります。
家族や周囲の人だけで介護することが難しいと感じたら、介護保険などのサービスを利用していただきたいです。

二見いすず: 家族の息抜きの時間も必要だということですね。

黒野明日嗣Dr: はい。
認知症は人と人の関係を壊す病気だといわれています。
なかなか治せない病気であるからこそ、家族関係の維持というのは非常に大切です。
医療者や専門家のアドバイスを受けながら、介護される側も、介護する側も、お互いが自然に暮らせるよう家族でしっかり話し合っていただきたいと思います。

二見いすず: 介護者の気持ちの安定は、認知症の患者さんにも必ず伝わるはずです。
介護者の方々も無理をせずにぜひご自分の時間を大切になさってください。
お話は鹿児島県医師会の黒野明日嗣(くろのあすつぐ)ドクターでした。
ありがとうございました。

黒野明日嗣Dr: ありがとうございました。