2015.12.26 第660回放送分 『中耳炎』 ゲスト:牛飼 雅人ドクター


二見いすず: ドクタートークは、「中耳炎」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の牛飼雅人(うしかいまさと)ドクターです。
牛飼さん、よろしくお願いいたします。

牛飼雅人Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は滲出性中耳炎、慢性中耳炎についてお話をお伺いいたしました。
最終日の今日は、子どもの急性中耳炎にまつわる最近のトピックスをお話いただけるということですね。

牛飼雅人Dr: はい。
子どもの急性中耳炎と言いますと、従来は耳の痛みと発熱が典型的な症状でしたが、最近は痛くない、熱が出ない、急性中耳炎が増えています。

二見いすず: 痛くない、熱が出ない、急性中耳炎ですか。

牛飼雅人Dr: はい。
急性中耳炎は喉や鼻についた細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り、炎症を起こす病気ですが、その主な原因菌と言われているのが、肺炎球菌とインフルエンザ菌です。
肺炎球菌による中耳炎は高い熱が出たり、強い痛みを引き起こしやすいのですが、インフルエンザ菌による中耳炎は発熱や痛みが少ない傾向にあるんですね。

二見いすず: そうですか。
それは肺炎球菌による急性中耳炎が減ったということでしょうか。

牛飼雅人Dr: 実は国内では2010年から小児用肺炎球菌ワクチンの接種が始まったという背景があります。
ですからこれはあくまでも予想ですが、肺炎球菌ワクチンの接種によって肺炎球菌を原因とした中耳炎が減り、インフルエンザ菌を原因とした発熱や痛みの少ない中耳炎が増えたのではないかと考えられます。

二見いすず: 耳の痛みや発熱がないと、中耳炎だと気付かない場合もありそうですね。
インフルエンザ菌による急性中耳炎が増えたことによって、治療法などに変化は出ているのでしょうか。

牛飼雅人Dr: インフルエンザ菌は薬が効きにくい薬剤耐性菌が増えていまして、
以前に比べると治療が長期化する傾向にあります。
抗菌剤が効きにくい菌も増えていますので、必要に応じて鼓膜切開や換気チューブの挿入を組み合わせて治療を行います。
またインフルエンザ菌による急性中耳炎は、繰り返しやすいという特徴もあります。
特に集団保育を受けているお子さんは風邪や感染症にかかりやすいので注意が必要です。

二見いすず: わかりました。
耳鼻咽喉科での定期検診は必要でしょうか?

牛飼雅人Dr: しきりに耳に手をあてる、耳だれが出る、名前を呼んでも振り返らないなどの症状がお子さんに見られたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
また、滲出性中耳炎をそのまま放置したり、完治しないままにしておくと、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎といった重症の中耳炎に移行する場合があります。
特に真珠腫性中耳炎の治療には手術が必要ですので、リスクが高い方はぜひ定期的な検査を受けてください。

二見いすず: 中耳炎も早期診断・早期治療が重要だということですね。
4週にわたり、「中耳炎」についてお話を伺ってまいりました。
鹿児島県医師会の牛飼雅人(うしかいまさと)ドクターでした。
ありがとうございました。

牛飼雅人Dr: ありがとうございました。