2016.7.30 第691回放送分 『感染症・B型肝炎ワクチン』 ゲスト:西 順一郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「感染症」についてお送りしております。
お話は、鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、今週もよろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: さて、最終日の今日は感染症の中でも、B型肝炎ワクチンについて、新しいトピックスをお話いただけるということですね。

西順一郎Dr: はい。
今年の10月からこれまで任意接種だったB型肝炎ワクチンが定期接種になります。

二見いすず: 今年の10月からB型肝炎ワクチンが定期接種になるということなんですが、対象者はどのようになっていますか?

西順一郎Dr: B型肝炎ワクチンの定期接種の対象は平成28年4月以降に生まれた0歳児です。
生後2ヵ月、3ヵ月、7〜8ヵ月の3回接種が標準となります。

二見いすず: 平成28年4月以降に生まれた0歳児が対象で、3回接種が標準だということですね。

西順一郎Dr: はい。
これまでは妊婦がB型肝炎ウイルスに感染していた場合だけ、新生児に接種していましたが、10月からは母親の感染に関わらず、すべての子どもに接種がすすめられることになりました。

二見いすず: 母子感染予防だけでなく、すべての子どもが対象になったということですね。
それでは、B型肝炎ウイルスには、どのようにして感染するのでしょうか。

西順一郎Dr: B型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染します。
分娩時の母子感染のほか、血液や体液が皮膚の傷口や粘膜につくことで感染する恐れがあります。
また、性交渉でも感染するため、最近、若い方の性行為感染が増えています。

二見いすず: 母子感染以外でも感染するというのはこわいですね。

西順一郎Dr: 平成14年度には佐賀県の保育所で25人の集団感染が起きたこともあり、集団生活でも感染が起こります。
また、父親からの感染も報告されており、すべての子どもたちの感染を防ぐ必要があることが分かってきています。

二見いすず: 母子感染の予防だけではなく、すべての子どもにワクチンが必要だということですね。

西順一郎Dr: そのとおりです。
特に免疫力の発達していない乳幼児期がB型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎は起こりにくいのですが、ウイルスが潜伏して体内に持続感染します。

二見いすず: 症状が出ないまま、持続感染することがあるのですね。

西順一郎Dr: はい。
持続感染している人は、数年から数十年かけて慢性肝炎を発症し、慢性肝炎はさらに肝硬変や肝がんに進行します。
定期接種の対象となるのは0歳児ですが、1歳以上のお子さんにも任意接種として接種できます。
将来の肝がんを防ぐためにも、ぜひ多くの子どもさんにB型肝炎ワクチンを受けてほしいと思います。

二見いすず: よく分かりました。
5週にわたり、感染症について貴重なお話をお伺いいたしました。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
ありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。