2017.9.2 第748回放送分 『腰痛』 ゲスト:小宮 節郎ドクター



二見いすず: 今月のドクタートークは「腰痛」について、鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)ドクターにお話をお伺いいたします。
小宮先生、どうぞよろしくお願いいたします。

小宮節郎Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今月のテーマは腰痛ですが、年齢が上がるにつれて、「腰が痛い」という声をよく耳にするような気がいたします。
やはり腰痛に悩んでいる方は多いのでしょうか。

小宮節郎Dr: おっしゃるように腰痛に悩む人はとても多く、男性では1番目、女性では2番目に訴えが多い疾患です。
男性では40代、女性では60代に多いようです。
日本全体では1,000万人以上の人が腰痛に悩んでおり今や国民病ともいえます。

二見いすず: 「腰痛」とは、医学的にどのように定義されているのでしょうか。

小宮節郎Dr: 実は腰痛の定義として世界的に確立されたものはありません。
腰痛は文字通り「腰部の痛み」と解釈されますが、そもそも「腰部とはどの部位か」、「痛みとは何か」ということに世界的に一致した見解がないのです。
日本では腰痛を「背中の一番下の肋骨部からお尻の下までの痛み」と定義しています。

二見いすず: わかりました。
腰痛の原因について教えていただけますか。

小宮節郎Dr: 腰痛は原因がはっきりしているものと、はっきりしないものの2つに分類され、後者を非特異的腰痛と呼んでいます。
意外にもこの非特異的腰痛が全体の80%を占めており、原因がつかめない腰痛が多いというのが実情です。

二見いすず: 原因がつかめない、非特異的腰痛の人が多いということですが、
腰痛になりやすい姿勢や動作はあるのでしょうか?

小宮節郎Dr: あります。
重いものを持ち上げたり、腰の曲げ伸ばしや左右への旋回を繰り返すような作業、定期的に姿勢を変えることができないような一定姿勢での作業、あるいは長時間立って行う作業などが腰痛を発症しやすいと言われています。

二見いすず: 重いものを持ち上げるなど、腰痛を発症しやすい作業を伴う職業の方は注意が必要ですね。

小宮節郎Dr: そうなんです。
実は職場環境も腰痛に関係しています。
仕事に対する満足度が低かったり、仕事が単調であったり、仕事量が多すぎるような環境では腰痛の発症が多いようです。
また、職場での人間関係、精神的ストレスも関係すると言われています。

二見いすず: そうなんですね。
日々の生活習慣で腰痛に関係するものもありますか?

小宮節郎Dr: あります。
喫煙は腰痛発症の危険因子になります。
運動に関しては運動不足によって腰痛が発症しやすいと言われています。
しかし、過度な身体活動によっても腰痛の発症は増加します。
なお、体幹の筋力と腰痛は関係がありません。
また、肥満は腰痛と関係がありそうですが、実は腰痛とは関係がありません。
一方、うつ病は腰痛を慢性化させるようです。

二見いすず: お話は鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)ドクターでした。
ありがとうございました。

小宮節郎Dr: ありがとうございました。