2017.9.16 第750回放送分 『腰痛』 ゲスト:小宮 節郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「腰痛」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)ドクターです。
小宮先生、今週もよろしくお願いいたします。

小宮節郎Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 今週は腰痛の治療ついてお話をお願いいたします。

小宮節郎Dr: 腰痛の治療の基本は保存療法です。
急性腰痛では安静にしておいた方がいいと皆さん思いがちですが、必ずしも安静が有効とは限りません。

二見いすず: そうなんですか。

小宮節郎Dr: 安静にするのは発症後2日間くらいまでで、その後はむしろ痛みが許せる範囲内で動いていた方が寝ているよりも痛みをやわらげ、機能性をよりよく改善します。
その方が休業期間も短縮し、その後の再発予防にも効果的だとする医学論文が多数あります。

二見いすず: コルセットはどのように評価されていますか。

小宮節郎Dr: 腰痛による機能改善には役立ちます。
動作時、痛みが増すのを防ぎますが、痛みそのものは改善させません。
コルセットに頼っていると、なかなか腰痛が改善されず、慢性化することがあります。
また、骨盤牽引については、残念ながら有効性を示す世界的論文はありません。

二見いすず: それでは、湿布類はいかがでしょうか。

小宮節郎Dr: これはもちろん有効だと思います。
湿布をはじめ温熱療法と運動療法を組み合わせると効果が上がります。

二見いすず: マッサージ、徒手矯正、鍼治療などは有効でしょうか。

小宮節郎Dr: これらは世界的にも医学的にしっかりと論文に示されたものはなく、効果があるとは言えないとされています。
これまで申し上げましたように、腰痛の原因は多数あります。
医療機関でないところでは、腰痛の原因としての多々ある疾患から的確に診断をするのは難しいとされています。
そのため整形外科医などによるしっかりとした診断を受け、それに応じた個別的で多様な治療を受けられた方が良いと言われています。

二見いすず: それでは運動療法は有効でしょうか。

小宮節郎Dr: 痛みの時期によります。
発症して4週未満の急性腰痛には効果がありません。
一方、3ヵ月以上に及ぶ慢性腰痛には高い有効性があると言われています。
ストレッチ、筋力強化訓練、エアロビクス、プール内リハビリテーションなど多彩な運動療法がありますが、どれも同様に効果があります。

二見いすず: 先週のお話の中で長引く腰痛は「脳機能の不具合」によってもたらされるとおっしゃっていましたね。

小宮節郎Dr: はい。
実は腰痛に限らず、体の痛みはすべて脳で感じているのです。
病は気からと申します。「腰痛が治らないのでは?」、「動くと悪化するのでは?」などと怖がらずに、「大丈夫」と繰り返し自分に言い聞かせ、心を強くしていきましょう。

二見いすず: 心と体は密接につながっていることをあらためて実感させられました。
鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)ドクターでした。
ありがとうございました。

小宮節郎Dr: ありがとうございました。