2017.9.30 第752回放送分 『腰痛』 ゲスト:小宮 節郎ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「腰痛」をテーマにお送りしております。
最終回の今日は筋肉の病気・サルコペニアについて伺います。
お話は鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)ドクターです。
小宮先生、よろしくお願いいたします。

小宮節郎Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: サルコペニアという言葉はあまり聞き慣れないのですが、教えていただけますか。

小宮節郎Dr: はい、わかりました。
サルコペニアというのは30年ほど前から提唱されている言葉です。
加齢による筋肉の衰えを示す疾患群です。
老年病の一つで虚弱状態として捉えられます。
筋肉は実は体重の40%を占め、運動器官としてのみならず、生体内で最大の代謝調節器官でもあります。
基礎代謝の30%は筋肉に依存します。

二見いすず: 筋肉が代謝にも関係しているのですか。

小宮節郎Dr: ええ、実はそうなんです。
ですから、筋肉量の低下をもたらすサルコペニアでは、基礎代謝の低下が大きく、インスリン抵抗性が大きくなり、メタボリック症候群や内分泌代謝障害を引き起こします。
従って筋肉の衰えは生命や生活の質の低下に大きくつながります。

二見いすず: サルコペニアは現代社会ではどんな意味があるのでしょうか。

小宮節郎Dr: サルコペニアは筋肉の老化によって運動障害が起こり、転倒・骨折の危険性が増しています。
日常生活における活動性や自立性の低下がみられます。
生命の虚弱状態にあり、死亡の危険性をも大きくはらんだ状態と判断されています。
超高齢者時代にあって、社会の目標は老人の自立した人生、健康寿命の延伸とされています。
そのため今後ますます増加するサルコペニアは的確に診断され、進行の予防、治療に介入していくことが必要とされています。

二見いすず: どのような手順で診断されるのでしょうか。

小宮節郎Dr: はい。まず年齢です。
65歳以上の人は要注意です。
診断にあたっては、筋肉量の減少は必須条件であり、それに加えて握力の低下あるいは歩行能力の低下のどちらかがみられればそれだけでサルコペニアと診断されます。

二見いすず: 原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

小宮節郎Dr: まず加齢です。
寝たきり状態や内分泌機能の低下、全身の炎症や、がん病変の存在、栄養不足、糖尿病、肺の病気などがサルコペニアの原因としてあげられています。

二見いすず: では予防方法を教えてください。

小宮節郎Dr: 食事の面では、エネルギー不足というのは筋肉量の減少を来しますので、十分なエネルギー源を炭水化物や脂質で毎回の食事から得てください。
また、十分なアミノ酸を摂取して筋肉タンパク質の合成が促進されるようにします。

二見いすず: 運動はいかがでしょうか。

小宮節郎Dr: おすすめですよ。
早歩き、ジョギング、ハイキングなどは楽しみながらできる運動です。
スクワットや片脚立ちも効果があります。
また、筋トレにもどうぞチャレンジされてみてください。

二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島大学病院整形外科教授の小宮節郎(こみやせつろう)先生でした。
ありがとうございました。

小宮節郎Dr: ありがとうございました。