二見いすず: | 今月のドクタートークは「子どもの貧血」をテーマにお送りしております。 お話は鹿児島県医師会の児玉祐一(こだまゆういち)ドクターです。 児玉さん、今週もよろしくお願いいたします。 |
児玉祐一Dr: | よろしくお願いします。 |
二見いすず: | 今週は子どもに多いという鉄欠乏性貧血について詳しくお話をお願いいたします。 |
児玉祐一Dr: | はい。 小児期にみられる貧血の70%は鉄欠乏性貧血です。 特に2歳以下の乳幼児と思春期にみられます。 |
二見いすず: | どちらも成長が著しく、鉄需要の多い時期に発症するということなんですね。 |
児玉祐一Dr: | そうですね。 乳児期では生後4ヶ月までは出生時に母体から移行した鉄量だけで足りると言われています。 しかし、発達が著しい時期だけに鉄の消費量も多く、母乳のみの哺育が長期間続くような場合に鉄欠乏性貧血になりやすいです。 |
二見いすず: | 乳児の鉄欠乏はどれくらいの割合で起こるのでしょうか。 |
児玉祐一Dr: | 乳児では約4分の1が鉄欠乏であると言われています。 特に早産児や低出生体重児では、出生児に保有している鉄量が少ない上に、発育が加速するので早期に鉄欠乏になりやすいです。 二見さんは、牛乳貧血をご存知ですか? |
二見いすず: | いえ、初めて聞いたのですが、牛乳の飲み過ぎによって貧血が起こる、ということでしょうか? |
児玉祐一Dr: | そうなんです。 牛乳の多飲により発症する牛乳貧血は、牛乳が元来鉄分を多く含まないことに由来します。 お子さんが牛乳を飲みすぎて、ごはんを食べられない、ということがないようにご家庭でぜひ注意していただきたいです。 |
二見いすず: | はい。 よくわかりました。 |
児玉祐一Dr: | 最近では鉄欠乏性貧血が精神発達に影響することが懸念されています。 健全な発育を促すためにも、適切な予防・治療が必要です。 |
二見いすず: | お子さんが鉄欠乏性貧血になった場合は、どのような治療を行うのでしょうか。 |
児玉祐一Dr: | 治療は鉄剤の内服になります。 シロップ製剤でも飲めない乳児には、鉄強化ミルクを使用する場合もあります。 鉄剤投与はヘモグロビン値が正常化した後も、体内に貯蔵鉄を補充する目的でさらに約3ヶ月間継続します。 |
二見いすず: | わかりました。 治療について他にも気をつけておきたいことはありますか? |
児玉祐一Dr: | 先ほどお話しました牛乳の多飲による貧血の原因として、牛乳の鉄分が少ないこと以外に、乳児消化管アレルギーによると考えられる蛋白漏出性胃腸症候群が挙げられます。 結果として、吸収障害や血便をきたし、貧血に至ることがあります。 この場合、いくら鉄剤を投与しても効果はあらわれません。 まれな疾患ですが、注意深い問診が必要となります。 |
二見いすず: | わかりました。 お子さんに気になる症状がある時には、ぜひ一度小児科を受診なさってください。 お話は鹿児島県医師会の児玉祐一(こだまゆういち)ドクターでした。 ありがとうございました。 |
児玉祐一Dr: | ありがとうございました。 |