2018.10.20 第807回放送分 『目の病気』 ゲスト:土居 範仁ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「目の病気」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の土居範仁(どいのりひと)ドクターです。
土居さん、今週もよろしくお願いいたします。

土居範仁Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 先週は、糖尿病が原因で起こる目の病気「糖尿病網膜症」について、早期発見して、血糖をコントロールすることが大切であるとうかがいました。
今週は糖尿病網膜症の治療について、詳しく教えてください。

土居範仁Dr: はい。
近年、注目されている治療法として、抗VEGFという薬を目に注射する治療があります。
前回、糖尿病によって、網膜の広い範囲で血管が詰まると、新生血管という異常な血管が出来てきて、それが病気を悪化させてしまうとお話ししました。

二見いすず: はい。

土居範仁Dr: 抗VEGF薬は、この新生血管を抑える働きがあります。
また、傷ついた網膜の血管から漏れ出す血液成分をおさえて、網膜の腫れを改善させ、低下した視力を改善させることができるお薬です。

二見いすず: そうですか。
いったん低下した視力の改善が期待できるというのは、すごいですね。

土居範仁Dr: はい。そうなんです。
ただ、抗VEGF薬の効果は約1カ月で、1カ月を過ぎるとまた、病状が悪化することがあります。
そのため、月1回の注射を症状が安定するまで数回行うことが必要な場合もあります。
また、この治療は保険適応ですが、薬剤が高額であることもネックになっています。

二見いすず: そうなんですね。
他にも治療法はあるのでしょうか。

土居範仁Dr: 抗VEGF薬の治療適応は広がりつつありますが、現在も治療の中心は、網膜光凝固術です。
これは、レーザー光を照射し、熱で網膜を焼いてしまう治療法です。
この治療で、病気の進行を抑えることができるのですが、実は、この治療について、一つ知っておいていただきたいことがあります。

二見いすず: はい。
それはどのようなことでしょうか。

土居範仁Dr: このレーザー治療後、今まで以上に見えにくくなる患者さんがいる、ということです。

二見いすず: それはどうしてでしょうか。

土居範仁Dr: レーザー治療は網膜の異常な血管を増やさないために、熱で凝固する治療です。
つまり、網膜を焼くのですから、場合によっては以前よりも見えにくくなってしまうことがあるんです。

二見いすず: なるほど。

土居範仁Dr: この網膜光凝固術というレーザー治療は、網膜症の進行を抑える治療であって、見え方をよくする治療ではないことを知っていただきたいと思います。
つまり、この治療で、以前より見にくくなったとしても、失明を防ぐにはやむを得ない治療なのです。

二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島県医師会の土居範仁(どいのりひと)ドクターでした。
土居さん、ありがとうございました。

土居範仁Dr: ありがとうございました。