2018.12.22 第816回放送分 『肺がん』 ゲスト:水野 圭子ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「肺がん」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の水野圭子(みずのけいこ)ドクターです。
水野さん、今週もよろしくお願いいたします。

水野圭子Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今週は肺がんの治療薬の一つ・免疫チェックポイント阻害薬についてお話をお願いいたします。

水野圭子Dr: はい。
2015年12月から非小細胞肺がんの患者さんに「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれるがん治療薬が使えるようになりました。
ノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑先生の研究成果を基に開発された薬剤も免疫チェックポイント阻害薬の一つです。
現在までに、すでに4種類の免疫チェックポイント阻害薬が保険適応となっています。

二見いすず: そうですか。
いま話題のお薬も肺がんの治療に使えるということなんですね。
では、免疫チェックポイント阻害薬には、どんな特徴があるのでしょうか。

水野圭子Dr: まず、今までの肺がんの薬物療法は、がん細胞そのものを攻撃する細胞障害性抗がん剤、もしくは細胞の特定のタンパク質を狙って攻撃する分子標的薬に大きく分かれていました。

二見いすず: そうなんですね。

水野圭子Dr: それに対して免疫チェックポイント阻害薬は、人の体が本来持っている免疫力を使って、がん細胞を攻撃します。
免疫とは自分でないものを排除するという、もともと人間の体に備わっている防御システムの一つです。
がん細胞を攻撃するT細胞という免疫細胞の表面には、過剰な免疫反応を抑えるブレーキの役割を果たす「PD-1」というタンパク質があります。
免疫チェックポイント阻害薬の一つである抗PD-1抗体薬は、このPD-1によるブレーキを外し、T細胞ががんを攻撃できるようにするという仕組みで、がん治療を行います。

二見いすず: 副作用はあるのでしょうか。

水野圭子Dr: 従来の化学療法に比べると総じて副作用が少ないと報告されていますが、今までの抗がん剤になかったような副作用も報告されており、注意が必要です。

二見いすず: わかりました。
免疫チェックポイント阻害薬の登場で、肺がんの治療の選択肢はいっそう広がったということですね。

水野圭子Dr: 免疫チェックポイント阻害薬は、がん治療の新しい扉を開いたお薬ですが、すべての肺がん患者さんに使えるわけではなく、また使えたとしてもすべての患者さんに効果があるわけではないことを知っておいていただきたいと思います。
免疫チェックポイント阻害薬に限らず、今肺がんの薬物療法は目覚ましい進歩を遂げています。
がんが進行していても、何もせず諦める必要はありません。
適切な治療を行うことで予後の延長や症状の改善が期待できますので、主治医の先生とよく話し合った上で治療を進めてください。

二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島県医師会の水野圭子(みずのけいこ)ドクターでした。
ありがとうございました。

水野圭子Dr: ありがとうございました。