2018.12.29 第817回放送分 『肺がん』 ゲスト:水野 圭子ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「肺がん」をテーマにお送りしております。
お話は鹿児島県医師会の水野圭子(みずのけいこ)ドクターです。
水野さん、最終週の今日もよろしくお願いいたします。

水野圭子Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 今週は肺がんにならないために日常生活で気をつけておきたいことについて、お話をお願いいたします。

水野圭子Dr: まず、がんの原因には多くの要素があり、まだすべてが明らかになったわけではありません。
ただ、その大きな原因として遺伝子の変異が言われています。
私たちのからだは約60兆個の細胞からなっています。
そのうち毎日1%くらいの細胞が壊れてしまうので、細胞分裂をして減った細胞を補う必要があります。
細胞分裂では細胞の設計図であるDNAをコピーするのですが、その際、コピーミスが起こることがあり、これを遺伝子の突然変異と言います。
がんの原因の一つは、この遺伝子の突然変異の積み重ねと言われています。

二見いすず: がんは遺伝子の突然変異から生まれるということなんですね。

水野圭子Dr: はい。
近年の研究によりますと、たばこを多く、長期間吸うほど、遺伝子変異数が増加することがわかっています。

二見いすず: 遺伝子変異数が増加するということは、肺がんになりやすくなるということですね。怖いですね。

水野圭子Dr: そうですよね。
たとえば、喫煙者が肺がんになるリスクは非喫煙者に比べ、男性で約4.5倍、女性で約4.2倍です。
しかし、男性が禁煙をした場合、リスクは約半分の2.2倍に減少するといわれています。
身近にたばこを吸う方がいらっしゃったら、肺がんを予防するためにもぜひ禁煙をすすめてください。

二見いすず: わかりました。
では、最近話題の受動喫煙はいかがでしょうか。

水野圭子Dr: 受動喫煙による肺がんのリスクは、約1.3倍と言われています。
喫煙によりがんにかかるリスクが高まることは、肺がん以外にも肝臓がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、子宮頸がんで明らかになっていますが、受動喫煙でリスクが高まることが証明されているのは、今のところ肺がんだけです。

二見いすず: 自分がたばこを吸わなくても、受動喫煙により肺がんのリスクが上がるのですね。

水野圭子Dr: 肺がんを予防するためには、たばこを吸わないことはもちろんですが、他人のたばこの煙を避けることも重要です。

二見いすず: 大切な人を守るためにも、ぜひ禁煙とともに、早期発見・早期治療を心がけていただきたいですね。

水野圭子Dr: はい。そうですね。
いま男性の10人に1人、女性の22人に1人が肺がんになるといわれています。
現在の日本において肺がんは決して珍しい病気ではありません。
肺がんの治療においては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による進歩が目覚ましく、適切な診断・治療を行うことで予後の延長が期待できます。
気になる症状があるときは早めにかかりつけ医に相談しましょう。

二見いすず: よくわかりました。
5週にわたり、肺がんについて貴重なお話をお伺いいたしました。
鹿児島県医師会の水野圭子(みずのけいこ)ドクターでした。
ありがとうございました。

水野圭子Dr: ありがとうございました。