2019.2.2 第822回放送分 『心房細動』 ゲスト:市來仁志ドクター



二見いすず: 2月になりました。今月のドクタートークは、
「心房細動(しんぼうさいどう)」をテーマにお送りいたします。
お話は、鹿児島県医師会の市來仁志(いちきひとし)ドクターです。
市來さん、よろしくお願いいたします。

市來仁志Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: まず、「心房細動」についてですが、あまり耳慣れない病名のように思いますので、どのような病気なのか、分かりやすく教えていただけますか?

市來仁志Dr: はい。
「心房細動」は不整脈の一つです。
通常、心臓は1分間に60回〜80回ほど規則的に伸び縮みをすることで全身に血液を運ぶ働きをしていますが、心房細動が起こると、心臓の上の部屋「心房」が1分間に600回程度小刻みに震えているだけの状態になって、脈が速くなってバラバラと不規則に打つようになります。

二見いすず: 心房細動の症状にはどんなものがありますか?

市來仁志Dr: はい。
そうです。
発作が起こると、胸のドキドキ感、つまり動悸を感じる方が多いのですが、中には全く自覚症状がないという方も2〜3割はいると言われています。

二見いすず: そうなんですね。
心房細動は不整脈の1つということですが、命にかかわるような危険なものなのでしょうか?

市來仁志Dr: 心房細動自体は命にかかわるような病気ではないのですが、大きく分けて2つのリスクがあります。
1つは心不全、もう1つは血栓症が原因で起こる脳梗塞です。

二見いすず: どちらも怖い病気ですね。

市來仁志Dr: はい。
心房細動になって脈が速い状態が長く続くと、心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすことがあります。
心不全になりますと、息苦しさや疲れやすさ、足のむくみなどの症状が出てきます。

二見いすず: それは大変ですね。
もう1つの脳梗塞の方はどうでしょうか?

市來仁志Dr: こちらの方がより大きな問題なんですが、心房細動になって心房が細かく震えているだけの状態が続くと、心臓の中で血液がよどむことで、血の塊、いわゆる「血栓」ができてしまうことがあります。
それが脳に飛んで、脳の血管を詰めてしまうと、脳梗塞を起こすことになります。

二見いすず: 脳梗塞といえば、重い後遺症や突然死というイメージがありますが。

市來仁志Dr: はい。
心房細動による血栓症が原因で起こる脳梗塞は、脳の大きな血管を根元から塞いでしまうことが多く、他の原因で起こる脳梗塞と比べて重症になりやすいです。
寝たきりになったり、命にかかわったりすることが多いと言われています。

二見いすず: 心房細動があると、脳梗塞のような命にかかわる病気を引き起こすリスクが高まるということですね。

市來仁志Dr: はい。
特に高血圧、糖尿病、心不全などがある方、今までに脳梗塞を起こしたことのある方、75歳以上の方などは、血栓症になりやすいということが知られていますので、特に注意が必要ですね。

二見いすず: よくわかりました。
お話は、鹿児島県医師会の市來仁志(いちきひとし)ドクターでした。
どうもありがとうございました。

市來仁志Dr: ありがとうございました。