2019.2.23 第825回放送分 『心房細動』 ゲスト:市來仁志ドクター


二見いすず: 今月は「心房細動(しんぼうさいどう)」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島県医師会の市來仁志(いちきひとし)ドクターです。
市來さん、最終週の今日もよろしくお願いいたします。

市來仁志Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 先週は心房細動の一般的な治療法についてお尋ねいたしました。
いずれもお薬による治療でしたね。

市來仁志Dr: はい。
ただ、心房細動の発作を予防する抗不整脈薬は副作用も多く、予防効果もいまひとつということが以前から問題視されていました。
そこで20年ほど前から行われるようになったのが、「カテーテルアブレーション」という治療です。

二見いすず: どのような治療法なのでしょうか?

市來仁志Dr: はい。
簡単にいいますと、カテーテルを使った手術になります。
足のつけ根の太い血管から心臓までカテーテルを持っていって、左心房につながっている肺静脈の周りで高周波を流して焼き切ることで、心房細動の引き金となる最初の脈の乱れ「期外収縮」が肺静脈から心臓の中に出て来るのを防ぐ手術となります。

二見いすず: お薬の治療よりも効果が高いのですか?

市來仁志Dr: はい。
カテーテルアブレーションを受けていただくことで、抗不整脈薬を続けるよりも、心房細動の再発が非常に少なくなり、将来的な脳梗塞や死亡率が減少するという効果も報告されています。
また最近では、カテーテルアブレーションを受けた患者様は、将来、認知症になる割合が減少するという報告もあります。

二見いすず: そうですか。患者さんにとって、とてもメリットの大きい治療なのですね。

市來仁志Dr: はい。
局所麻酔及び静脈麻酔で手術ができ、また、体の表面に傷が残らない治療のため、患者様には負担が少ないという利点もあります。
さらに数年前からは「クライオアブレーション」という新しい治療も
行われるようになりました。

二見いすず: それはどんな方法なんでしょうか?

市來仁志Dr: 「カテーテルアブレーション」のひとつなのですが、高周波で焼き切るのではなく、肺静脈に風船をはめ込んで冷凍凝固させることで、期外収縮が心臓に出てこないようにする方法です。
手術時間も短くなり、患者様の負担がさらに少なくなりました。
いずれのアブレーションでも、5日間程度の入院で治療が可能です。

二見いすず: どんな患者さんにも効果があるのでしょうか?

市來仁志Dr: はい。
心房細動の発作が起き始めた初期の段階のほうが効果を得られやすいと言われています。
心房細動は生活習慣病の1つと考えられますので、早期発見・早期治療と生活習慣改善での予防が大切です。
少しでも気になる症状が出ましたら、早めに受診していただきたいと思います。

二見いすず: よくわかりました。
今月は「心房細動」をテーマに、4週にわたり、お話をしていただきました。
鹿児島県医師会の市來仁志(いちきひとし)ドクターからお話を伺いました。
市來さん、ありがとうございました。

市來仁志Dr: ありがとうございました。