2019.5.25 第838回放送分 『ワクチン』4回目 ゲスト:南武嗣ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「ワクチン」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島県医師会の南武嗣(みなみたけつぐ)ドクターです。
南さん、最終週の今日もよろしくお願いいたします。

南武嗣Dr: はい。
よろしくお願いします。

二見いすず: 先週はお子さんの予防接種についてお話をしていただきましたが、
大人にとってもワクチンは決して無関係ではないのですよね?

南武嗣Dr: はい。
大人がかかりやすい感染症として、麻疹、いわゆる「はしか」と風疹がありますが、これらは感染力がとても強く、毎年のように流行を繰り返しています。
ウイルスがとても小さいので、インフルエンザと違ってマスクや手洗いでは予防することができません。
ワクチン以外、予防する手立てがないので、免疫を持ってない人がウイルスに触れると100%感染してしまいます。

二見いすず: 大人が麻疹や風疹に感染すると何が問題なのでしょうか?

南武嗣Dr: 実は、麻疹は重症化しやすく、先進国でも1000人に1人は脳症や重症肺炎を合併して亡くなっています。
妊娠している方がかかると、流産や早産、死産につながることもあります。
一方、風疹は「三日ばしか」とも呼ばれ、麻疹に比べれば重症化することは少ないのですが、妊娠中の女性が風疹にかかるとお腹の中の赤ちゃんまで風疹ウイルスに感染してしまい、難聴や白内障、緑内障、心身の発達の遅れなど、重い障害を持って生まれることが多いのです。

二見いすず: それは大変深刻な問題ですね。

南武嗣Dr: 麻疹や風疹は潜伏期間が長いので、ウイルスに感染してもすぐには症状が出ません。
気づかないうちに人に移してしまうことがあります。
もし、移した人が妊婦さんであれば、生まれてくる赤ちゃんに影響が出るかもしれません。

二見いすず: 妊娠可能な女性は、麻疹や風疹のワクチンを受けておいた方がいいということでしょうか。

南武嗣Dr: はい。
ただ妊娠中はワクチンを受けられないので、その前に予防接種をしておく必要があります。
その前にまず、ご自分が風疹や麻疹の免疫を持っているかどうか、病院で抗体検査を受けてください。

二見いすず: 子どもの頃にワクチンを2回打ったり、麻疹や風疹にかかったりしていて、すでに免疫を持っている人もいるので、抗体検査を受けるとわかるのですね。

南武嗣Dr: はい。
それから、一番の問題は現在39歳から56歳の男性です。
この世代の男性は、当時の国の方針で1度も風疹のワクチン接種を受けていないので、風疹にかかりやすいんです。
昨年12月、国はこの世代の男性に対し、2019年4月からの3年間、風疹の抗体検査とワクチン接種を無料で行うことを発表しました。
対象の方には今後、市町村から無料の接種券が送られてきますので、届いた方はこの機会にぜひ受診していただきたいと思います。

二見いすず: 風疹ワクチンの無償化は、現在39歳から56歳の男性が対象ということです。
ご自身のためにも、これから生まれる未来の子どもたちのためにもぜひ、抗体検査やワクチン接種を受けてください。
今月は、ワクチンについて大変貴重なお話をしていただきました。
鹿児島県医師会の南武嗣(みなみたけつぐ)ドクターでした。
南さん、ありがとうございました。

南武嗣Dr: ありがとうございました。