2019.6.15 第841回放送分 『感染症』3回目 ゲスト:西順一郎ドクター


二見いすず: 今月は「感染症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、よろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: さて、6月も半ばを過ぎ、気温や湿度が高くなってきましたが、これからの時期に多くなる「食中毒」も感染症の一種ということですね。

西順一郎Dr: はい。
食中毒の原因は細菌とウイルスが大半ですが、冬場に一番多いのが皆さんもよくご存じのノロウイルスですね。
一方、梅雨時期や夏場には細菌性の食中毒が多くなります。

二見いすず: 夏場に多いのは細菌性の食中毒とのことですが、どんなものか詳しく教えてください。

西順一郎Dr: はい。
まず、細菌性の食中毒は、毒素型と感染型の2つに分けられます。
毒素型は細菌が食品の中で増殖して毒素を作り、その毒素がついた食品を食べることで食中毒を起こすものです。
代表的なものに黄色ブドウ球菌がありますが、これは人の手を通して食品に付くことが多いので、調理をする前はしっかり手洗いをしましょう。
特に傷がある皮膚には黄色ブドウ球菌が増殖しやすいので、手や指に傷がある時は素手で食べ物を触るのは絶対にやめてください。

二見いすず: 黄色ブドウ球菌による食中毒は、どのような症状が出るのでしょうか。

西順一郎Dr: 菌に汚染されたものを食べてから3〜4時間で激しい嘔吐や腹痛、下痢などを引き起こします。
症状自体は1日くらいで収まりますが、脱水症状を起こしやすいので、水分補給はしっかりとしてください。

二見いすず: よくわかりました。
もう一つの感染型はいかがでしょうか。

西順一郎Dr: 感染型の食中毒の原因菌としては、主にカンピロバクターやサルモネラ菌、それからO-157などの腸管出血性大腸菌があります。
これらの細菌が付いたものを食べると、菌が腸の中で増殖して、腹痛や下痢、発熱、嘔吐などの症状を引き起こします。

二見いすず: では、それぞれについて詳しく教えてください。

西順一郎Dr: はい。
カンピロバクターは鶏肉に付いていることが多く、鶏肉を生で食べる習慣がある鹿児島では鳥刺しによる食中毒が時々発生します。
また、サルモネラ菌は鶏肉や卵、腸管出血性大腸菌は牛肉が原因となることが多いです。
いずれにしても、細菌が増殖しやすい時期は、しっかりと加熱してから食べていただきたいと思います。

二見いすず: 感染性の食中毒を防ぐには、食材を十分に加熱することが大事なのですね。

西順一郎Dr: はい。
特にO-157を含む腸管出血性大腸菌は感染力が強く、腸の中で増殖すると志賀毒素、ベロ毒素とも言いますが、そういう強い毒素を作り出します。
この毒素が激しい腹痛や下痢、血便を引き起こし、時には腎不全や脳症を起こして死に至ることもあるので、牛肉を食べる際は、必ず表面をよく焼いてから食べるようにしてください。

二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
ありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。