2019.6.22 第842回放送分 『感染症』4回目 ゲスト:西順一郎ドクター


二見いすず: 今月は「感染症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターです。
西さん、よろしくお願いいたします。

西順一郎Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 感染症には、さまざまな感染ルートがあるようですが、今日はマダニを介して起こる感染症についてお話してください。

西順一郎Dr: はい。
マダニが細菌やウイルスを媒介して感染症を引き起こすのですが、これから夏、秋にかけてはマダニによる感染症が増えてきます。

二見いすず: マダニによる感染症と言いますと、どのような病気があるのでしょうか。

西順一郎Dr: 一番多いのが、日本紅斑熱と重症熱性血小板減少症候群、通称SFTSです。
日本紅斑熱はリケッチアという細菌が原因となるもので、西日本で感染が報告されています。
鹿児島県では大隅半島に多く見られます。
もうひとつのSFTSは、SFTSウイルスによるもので、世界でも2011年に初めて発表された新しい感染症です。

二見いすず: それぞれ、発症するとどんな症状が出るのでしょうか。

西順一郎Dr: 日本紅斑熱は2〜8日の潜伏期間の後、発熱と倦怠感に続いて、手足から全身に赤い発疹が広がり、頭痛や筋肉痛が起こります。
一方、SFTSは5〜14日の潜伏期間の後、発熱や頭痛、倦怠感、下痢や嘔吐、リンパ節の腫れなどが起こります。
どちらも重症化すると、多臓器不全を起こして亡くなることもありますので、注意が必要な病気です。

二見いすず: わかりました。
もし発症したら、どのような治療をするのでしょうか。

西順一郎Dr: 感染型の食中毒の原因菌としては、主にカンピロバクターやサルモネラ菌、それからO-157などの腸管出血性大腸菌があります。
これらの細菌が付いたものを食べると、菌が腸の中で増殖して、腹痛や下痢、発熱、嘔吐などの症状を引き起こします。

二見いすず: では、それぞれについて詳しく教えてください。

西順一郎Dr: 日本紅斑熱は抗生物質が効きますが、SFTSには今のところ有効な治療薬がありません。
これらの病原菌を持っているマダニは全体の数パーセントですけれども、感染症を防ぐには、まずマダニに刺されないようにすることが一番です。

二見いすず: マダニに刺されないために気をつけておきたいことを教えていただけますか。

西順一郎Dr: マダニは山や森林の中だけでなく、普通の草むらや庭などにもいますので、そういうところで活動や作業をする時は、長袖・長ズボン、帽子や手袋などで肌の露出をできるだけ少なくしてください。
特にマダニは地面から上がってくることが多いので、ズボンの裾を閉じておくことをお勧めします。

二見いすず: その他に気を付けておきたいことがありますでしょうか。

西順一郎Dr: もし刺されてマダニが皮膚についたままになっていたら、無理にとらないで、お近くの医療機関にご相談ください。
無理にとると、病原体が体内に入りやすくなるので、ご注意ください。
また、マダニに刺されたことに気づかない場合もありますので、山や草むらなどに行き、数日経って先ほどの症状が出たら、早めに病院を受診してください。
二見いすず: よくわかりました。
お話は鹿児島県医師会の西順一郎(にしじゅんいちろう)ドクターでした。
西さん、ありがとうございました。

西順一郎Dr: ありがとうございました。