2019.7.6 第844回放送分 『子育て支援』1回目 ゲスト:鈴木重澄ドクター



二見いすず: 7月になりました。
今月のドクタートークは、「子育て支援」をテーマにお送りします。
お話は、鹿児島県医師会の鈴木重澄(すずきしげすみ)ドクターです。
鈴木さん、よろしくお願いいたします。

鈴木重澄Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 鈴木さんは小児科がご専門ということで、子育て世代の方と関わることが多いと思いますが、そういう方たちに対してどのようなことを感じていらっしゃいますか?

鈴木重澄Dr: 育児中のお母さんたちは、本当によく頑張っておられるなと思います。
私のクリニックにも、仕事の制服のままでお子さんを抱きかかえ、汗だくになって連れて来られる方も多いです。
一方で、お父さんが子どもを連れてきたり、健診に付き添ってきたりすると、この家庭では父親の協力が得られているんだなと安心します。
今は積極的に子育てに関わるお父さんも増えましたが、実際の育児ではどうしてもお母さんが主体となることが多いですね。

二見いすず: 近年、「ワンオペ育児」という言葉をよく見聞きいたしますが、これは一般的にお母さんが家事や子どもの世話を全部ひとりでしなければいけない状態のことですよね?

鈴木重澄Dr: はい、そうです。
「ワンオペ育児」になってしまう理由としては、夫の単身赴任や長時間労働といった物理的なことだけでなく、「男性は仕事を優先し、母性愛を持つ女性が育児をすべき」という価値観に、男性だけでなく女性もいまだにとらわれていることもあるのではないかと思います。

二見いすず: 確かにそういう価値観は根強く残っている気がします。
今は共働きのご家庭が多くなりましたので、仕事の責任と家事育児の板挟みで苦しんでいる女性も多いのかもしれませんね。

鈴木重澄Dr: 日本には昔から「子どもが小さいうちは母親が世話をするべき」という価値観、いわゆる「三歳児神話」がありましたが、1998年の厚生白書で「三歳児神話には合理的根拠は認められない」と否定されています。

二見いすず: にもかかわらず、今も子育ての責任を一人で抱え込み、悩んでいる女性も多いのではないでしょうか。

鈴木重澄Dr: そうですね。
乳児健診の場でも、程度の差はあれ、「育児がつらい」と感じているお母さんは少なくないように思います。
育児中のお母さんに一番多い悩みは、赤ちゃんが夜泣きしてなかなか寝てくれないということ。
お母さん自身も疲れているのに、とてもつらいですよね。

二見いすず: 「ワンオペ育児」を解消するには、どうすればいいのでしょうか。

鈴木重澄Dr: やはり身近な男性、つまり夫の育児や家事に対する意識改革は欠かせません。
つい言ってしまいがちですが、妻に対して「手伝おうか」とか「頑張ってね」は禁句です。
これは「育児は妻がやるもの」が前提の言葉だからです。
お勧めなのは、「僕がやるよ」とか「かわろうか」という言い方。
お互いに「ありがとう」「助かったよ」と感謝し合えたらいいですね。

二見いすず: まずは男女の役割分担に対して夫婦で意識を変えていくということですね。
お話は鹿児島県医師会の鈴木重澄(すずき しげすみ)ドクターでした。
鈴木さん、ありがとうございました。

鈴木重澄Dr: ありがとうございました。