2019.7.13 第845回放送分 『子育て支援』2回目 ゲスト:鈴木重澄ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「子育て支援」をテーマにお送りしています。
お話は、小児科がご専門の鹿児島県医師会の鈴木重澄(すずきしげすみ)ドクターです。
鈴木さん、どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木重澄Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 先週は、子育ての責任を母親が一人で背負う「ワンオペ育児」などによって子育てをつらいと感じている女性が少なくないというお話をうかがいました。

鈴木重澄Dr: はい。
それから、今、問題視されているのが「産後うつ」です。
出産後の女性が、特に理由もないのに悲しくなったり、不安になったりする「マタニティブルー」は以前から一般にもよく知られていましたが、「産後うつ」はそれ以上に深刻な問題だということがわかってきました。

二見いすず: マタニティブルーと産後うつはどう違うのでしょうか?

鈴木重澄Dr: マタニティブルーは、ホルモンバランスや環境の変化などによって起こる一過性の症状で、放っておいても1〜2週間で自然と改善することがほとんどです。

二見いすず: マタニティブルーは、特に治療の必要はないのですね。

鈴木重澄Dr: はい。
一方、「産後うつ」はれっきとした精神疾患の一つで、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、睡眠障害、自傷や自殺の企図といった重い精神症状が現れるのが特徴です。
適切な対処をしないと悪化したり、慢性化することもあります。
また、マタニティブルーの症状のある人は「産後うつ」にもなりやすいともいわれています。
2週間以上経っても症状が消えない場合は、早めに病院を受診してください。

二見いすず: それはとても心配ですね。
「産後うつ」の原因は、どのようなものなのか教えてください。

鈴木重澄Dr: 一番大きいのは、出産による女性ホルモンの急激な減少です。
女性は妊娠すると胎盤で通常の100倍以上の女性ホルモンを作り出します。
出産によってそれが一気に消失するので、更年期とは比較にならないほどの急激な女性ホルモンの減少が起き、人によっては重い更年期障害のような症状が出ます。
これが「産後うつ」の誘因の一つと考えられます。
「産後うつ」を発症するのは全体の10〜30%、その中でも重症になる方は約10%と言われています。

二見いすず: およそ3人に1人ということで、産後うつは決して珍しいものではないということがよくわかりました。
でも、同じように出産でホルモンの急激な減少が起きても、産後うつになる人とならない人がいるのはどうしてなのでしょうか?

鈴木重澄Dr: 更年期障害と同じように、産後うつの発症にも個人の体質や環境が大きく関わってきます。
中でも、元々うつ病などの精神疾患の既往歴がある、夫をはじめ周囲の人からの支援不足、経済的な不安や身近な人の死といった大きなストレスは発症の危険因子となります。
これらが重なるとさらに発症のリスクが高まるので、特に注意が必要です。

二見いすず: 大変よくわかりました。
次回は、お母さんの産後うつが子どもに及ぼす影響などについてお話していただきます。
鹿児島県医師会の鈴木重澄ドクターでした。
鈴木さん、ありがとうございました。

鈴木重澄Dr: ありがとうございました。