2019.7.20 第846回放送分 『子育て支援』3回目 ゲスト:鈴木重澄ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「子育て支援」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島県医師会の鈴木重澄(すずきしげすみ)ドクターです。
鈴木さん、今週もよろしくお願いいたします。

鈴木重澄Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 先週は、出産後のお母さんは誰でも産後うつを発症する可能性があるというお話をうかがいました。

鈴木重澄Dr: はい。
産後うつは大変つらく、お母さん自身を苦しめます。
昨年、ある新聞に産後うつに関する衝撃的な記事が載りました。
2015年からの2年間の妊産婦死亡例で、およそ3分の1の人が自ら命を絶っており、実にその9割が出産して1年未満です。
また、2005年から2014年の10年間の東京都のデータでは、妊産婦の異状死のうち、病気で亡くなられた3倍の63人が自ら命を絶っておられます。
産後1年未満では妊娠中の2倍の40人であり、衝撃的な内容です。
いずれもその背景に産後うつの発症が疑われています。

二見いすず: それは大変衝撃的で、痛ましいお話ですね。
産後うつがそれほど深刻なものだとは、知らない方も多いかもしれません。

鈴木重澄Dr: はい。
そして、小児科として重要な点は、お母さんの産後うつが子どもの虐待やネグレクト、最悪の場合は虐待死につながる危険性があるということです。
厚生労働省の調査によると、2016年度の心中を除く子どもの虐待死は49人で、そのうち、0歳児は65%の32人、さらにその半数の16人は生後0か月の新生児でした。
つまり、子どもの虐待死の多くは1歳になる前、特に生まれて1か月もたたないうちに起きているということになります。

二見いすず: お母さんが「産後うつ」を発症していた可能性があると考えてよろしいのでしょうか?

鈴木重澄Dr: そうですね。
お母さんが「産後うつ」を発症していた可能性もありますし、妊娠中からすでに孤立し、誰にも悩みを相談できずに苦しんでおられたのかもしれません。
夫婦間のDVや経済的な不安など、様々な問題を抱えていても、誰にも相談できない方は決して少なくないと思います。

二見いすず: 誰にも相談できずに、お母さんの産後うつや育児不安が長く続くと、お子さんの発育や成長にも大きな影響を及ぼすことがあるそうですね。

鈴木重澄Dr: はい。
たとえば極度のネグレクト環境で育った子は、重い自閉症のようになることがあります。
一方、虐待を受けて育った子は、落ち着きがなく、発達障害のように見える場合もあります。

二見いすず: 育児環境とお子さんの健やかな成長とは深い関係があるということがよくわかりました。

鈴木重澄Dr: はい。
「産後うつ」を発症しやすい産後1年間はもちろん、妊娠中から出産・子育てまで、お母さんを孤立させることなく、周囲の人とともに社会全体でサポートしていく体制づくりが必要だと思います。
国もその重要性に気づき、様々な支援策を進めているところです。

二見いすず: 次回は、そうした育児支援策についても詳しくお話をしていただきます。
鹿児島県医師会の鈴木重澄ドクターでした。
鈴木さん、ありがとうございました。

鈴木重澄Dr: ありがとうございました。