2019.8.17 第850回放送分 『熱中症』3回目 ゲスト:杉本龍史ドクター


二見いすず: 今月は「熱中症」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島市立病院救命救急センターの杉本龍史(すぎもとりゅうじ)ドクターです。
杉本さん、今週もよろしくお願いいたします。

杉本龍史Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 8月も中盤となりましたが、猛暑が続くこの時期、熱中症の危険度はますます高まっていますね。
熱中症と言っても、適切な対応をすれば治まるような軽度のものから命に関わるような重症のものまで、様々だと思いますが、それぞれの主な症状を教えていただけますか?

杉本龍史Dr: はい。
現在、医療従事者の間では、熱中症を重症度に応じてT度からV度という3つに区分しています。
それぞれの主な症状としては、まず、T度はめまいや立ちくらみ、筋肉痛、こむら返りなど。
U度は頭痛やだるさ、吐き気や嘔吐、判断力の低下や軽い意識障害など。
そして、最も重症度が高いV度では強い意識障害、けいれん、脳や心臓、腎臓などの内臓機能障害などが見られます。

二見いすず: では、症状をみれば、ある程度、自分でも重症度が判断できるということでしょうか?

杉本龍史Dr: いえ。
今表れている症状だけで重症度が決まるわけではないので、症状だけを見て、「軽い熱中症だろう」と安易に判断するのは避けていただきたいと思います。
そして、私が一番申し上げたいのは、そもそも、症状だけではそれが本当に熱中症かどうかはわからないということです。

二見いすず: 夏の暑い時にそれらしい症状があると、つい熱中症だと決めつけてしまいがちですが、実際にはそうでない場合も多いということでしょうか?

杉本龍史Dr: はい。
私たちの救命救急センターでも、真夏に倒れ、熱中症が疑われて救急搬送されてきた患者さんを検査してみると、実は脳卒中や心臓病、あるいは感染症だったということが決して少なくありません。
一般の人だけでなく、かかりつけの医師や救命救急士などの医療従事者も含めた全員が、「夏だから、熱中症だろう」と思い込まない、決めつけないことが何よりも大事だと思います。

二見いすず: 大変よくわかりました。
「熱中症だろう」と決めつけないことが大事なんですね。
それ以外の病気の可能性も考慮しつつ、「熱中症かもしれない」と思った時に、まずやるべきことを教えてください。

杉本龍史Dr: はい。
本人にしっかり意識があるような軽度の熱中症でしたら、涼しい環境下で衣服を緩めて熱を逃し、適切に水分補給をします。
できれば水やお茶ではなく、水分と同時に失われたミネラルを補うために、塩分と糖分がバランスよく入った経口補水液を飲みましょう。
「OS1(オーエスワン)」という商品名で、コンビニやドラッグストアにも売っていますので、ご家庭で常備していてもいいかもしれませんね。

二見いすず: 軽度の熱中症の場合は、まず体内の熱を逃がすことと適切な水分補給をすることが大切だということです。
次回は、病院の受診や救急搬送が必要なレベルの熱中症について教えていただきます。
お話は鹿児島市立病院の杉本龍史(すぎもと りゅうじ)ドクターでした。
杉本さん、どうもありがとうございました。

杉本龍史Dr: ありがとうございました。