二見いすず: | 今月は「熱中症」をテーマにお送りしています。 お話は、鹿児島市立病院救命救急センターの杉本龍史(すぎもとりゅうじ)ドクターです。 杉本さん、どうぞよろしくお願いいたします。 |
杉本龍史Dr: | よろしくお願いします。 |
二見いすず: | 杉本さんは、救命救急センターのドクターとして、熱中症の中でも特に重症の患者さんと関わっていらっしゃるそうですが、救急搬送されてきた方にはどのような治療をされるのでしょうか? |
杉本龍史Dr: | 以前にも申し上げたように、「熱中症の疑い」として運ばれてきても、それが本当に熱中症なのか、それとも別の病気によるものかは、検査をするまではわかりません。 ですから、まずは先入観を持たずに様々な角度から検査をします。 そこで熱中症と確定した場合は、点滴での水分補給や体を内外から強力に冷やす治療をし、さらに脳や心臓、腎臓といった重要な内臓がダメージを受けている場合は、それを個別に治療をしていきます。 |
二見いすず: | そうした治療を受けても、命を落としてしまう患者さんというのは、どれくらいいらっしゃるのですか? |
杉本龍史Dr: | 最善の治療を尽くしても、搬送された時にすでに意識がないような重症の患者さんの場合、当院でも毎年数名の方が亡くなっています。 また、2013年の全国調査では、夏の4か月間に熱中症と診断された方が約41万人、そのうちの約3万6000人が入院治療をし、それでも亡くなってしまった方が550人でした。 亡くなった方の86%は、65歳以上の高齢者というのが実情です。 |
二見いすず: | 大変厳しいお話ですね。 入院治療で何とか命を取り留めたとして、後遺症が残ってしまう方も多いのでしょうか? |
杉本龍史Dr: | はい。 実は、熱中症で重い後遺障害が残る方は亡くなる方以上に多いのです。 脳がダメージを受けていて意識が戻らないまま植物状態になる方や、腎臓の後遺症で人工透析になってしまう方、介護を要する寝たきり状態になってしまう方も決して少なくありません。 |
二見いすず: | そうなんですか!それはとても驚きました。 熱中症の予防や対策についてはたくさんの情報が出ていますが、重い後遺障害に苦しむ方が多いという事実をご存じない方も多いかもしれませんね。 |
杉本龍史Dr: | そうですね。 重い後遺障害が残るような重度の熱中症になるのは、やはり高齢の方が多いのですが、それまで元気に農作業やスポーツなどを楽しんでいた方の場合、熱中症がきっかけで寝たきりになってしまうというのは、ご本人やご家族にとって、これほど不本意なことはないと思います。 |
二見いすず: | 「あの時、気を付けていれば」とか「あの時、無理をしなければ」と、後悔してしまうのはとても辛いことですよね。 |
杉本龍史Dr: | そうですね。 熱中症は正しい知識を持って、それを実行すれば、防げる可能性もあるので、それぞれの方が自分の命を自分で守るという意識を持っていただければと思います。 |
二見いすず: | 大変よくわかりました。 次回も引き続き、熱中症から身を守るために大切なことを教えていただきます。 杉本さん、ありがとうございました。 |
杉本龍史Dr: | ありがとうございました。 |