2019.8.31 第852回放送分 『熱中症』5回目 ゲスト:杉本龍史ドクター


二見いすず: 今月は「熱中症」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島市立病院救命救急センターの杉本龍史(すぎもとりゅうじ)ドクターです。最終週となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

杉本龍史Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 4週にわたり、熱中症について様々なお話をうかがってまいりましたが、想像以上に熱中症というのは怖いものだということが改めてわかりました。

杉本龍史Dr: そうですね。
熱中症になる条件が揃えば誰でも発症する可能性があるにも関わらず、「自分は大丈夫」という油断から、取り返しのつかないことになってしまう方も多いのではないかと思います。

二見いすず: では、熱中症の予防として一番大切なことはなんでしょうか?

杉本龍史Dr: 一般的には、「熱中症予防=水分補給」というふうに思われがちですが、実は熱中症になる条件がそろった環境下では、水分をとっているかどうかはそれほど関係ないんです。
むしろ、「水分とミネラルさえしっかりとっていれば大丈夫」と思い込み、OS1(オーエスワン)などの経口補水液を飲みながら、暑い中での作業を頑張ってしまうことの方が危険だと思います。
実際、熱中症で搬送されてきた方が「今日は3リットルくらい水分をとっていたのに」と言われることもあるくらいです。

二見いすず: 確かに熱中症予防と言えば、水分補給や休養のお話が真っ先に出てきますが、実際には、熱中症の十分な予防策とは言えないということでしょうか。

杉本龍史Dr: はい。
最初にお話したように、熱中症になるかどうかは、気温や湿度などの環境的な要因と、体質や持病の有無などの個人的な要因、作業の内容の掛け合わせで決まります。
ですから、水分や休養をたくさんとっていたから熱中症にはならない、というわけではないんですね。

二見いすず: 私たちは水分や休憩をしっかりとれば、熱中症は防げると思いがちですが、そうではないということをしっかりと理解しないといけませんね。

杉本龍史Dr: 極論に聞こえるかもしれませんが、とにかく暑い時には「我慢しない、無理をしない、頑張らない」というのが一番の予防法だと思います。
生活のためのお仕事というのであれば、難しいかもしれませんが、行事ごとやお墓の掃除、草刈りなど、それほど急を要するものでなければ、日を改めるなり、時間帯を変えるなりして、暑い日に無理な活動するのは避けてもらいたい、というのが救命救急に関わる医師としての本音です。
室内でも我慢せずにクーラーをつけていただきたいですね。

二見いすず: 鹿児島の方、特にご高齢の方はまじめで我慢づよい方が多いと言われますが、こと熱中症に関しては「我慢や無理は禁物」ということですね。

杉本龍史Dr:  はい。
その通りです。
一人でも多くの方が、熱中症で命を落としたり、生涯、重い後遺障害に苦しんだりすることがないようにと願うばかりです。


二見いすず:  そうですね。
9月になっても、残暑による熱中症が心配されます。
暑い時は、我慢しない、無理しない、頑張らないということです。
ラジオをお聴きの皆さんもどうぞ気を付けてお過ごしください。
お話は鹿児島市立病院の杉本龍史(すぎもと りゅうじ)ドクターでした。
杉本さん、ありがとうございました。

杉本龍史Dr: ありがとうございました。