二見いすず: | 新しい年、2020年を迎えました。 今月のドクタートークは「アルコール依存症」をテーマにお送りします。 お話は鹿児島県医師会の田中 大三(たなか だいぞう)ドクターです。 田中さん、よろしくお願いいたします。 |
田中大三Dr: | よろしくお願いします。 |
二見いすず: | 田中さんは、アルコール依存をはじめ、薬物やギャンブル依存といった依存症の治療をご専門にされてるそうですが、まず、「アルコール依存症」とはどのようなものか教えていただけますか。 |
田中大三Dr | はい。 アルコール依存症をひとことで言うと、「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも、飲酒をはるかに優先させる状態」ということです。 アルコール依存症の診断基準にはいろいろありますが、「身体的、社会的にいろいろな問題があるにもかかわらず、自分の意思ではどうしても飲酒をやめることができない」という点が大きな目安です。 |
二見いすず: | お酒の飲み過ぎで健康を害したり、大切な人間関係が壊れてしまっても自分の意思ではお酒がやめられなくなった状態ということですね。 人には誰しも「わかっているけど、やめられない」ということはあると思います。 でも、それを続けることで自分の大切なものを失うとなれば、やめられるような気がしますが…。 |
田中大三Dr | 二見さんがおっしゃるように自分の優先順位を正しく見きわめて行動できるのが健全な状態ですが、それができなくなってしまうのが依存症という病気なのです。 アルコール依存症と聞くと、「意思が弱いから」とか「だらしのない性格だから」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。 |
二見いすず: | お酒がやめられないのは、ご本人の意思や性格の問題ではないのですね。 |
田中大三Dr | はい。 アルコールだけでなく、薬物やギャンブルなども含め、すべての依存症は脳の機能障害だということをまず、ご理解いただければと思います。 |
二見いすず: | 依存症は、あきらかに脳の障害による病気だということですか。 |
田中大三Dr | はい、そうです。 依存症の発症には、ドーパミンという脳内物質が大きく関わっています。 ドーパミンが脳内に分泌されると、人は楽しさ、やる気、達成感といった心地よい感情を生じます。 そのため、ドーパミンは快楽物質とも呼ばれているんですが、実は、アルコールにもこのドーパミンの分泌を活性化する働きがあるんです。 |
二見いすず: | お酒を飲むと楽しい気持ちになるのは、ドーパミンという快楽物質が出るからなのですね。 |
田中大三Dr | 最初のうちは、お酒を飲むとドーパミンがたくさん出て楽しいのですが、多量の飲酒を繰り返すうちにだんだんとドーパミンが減っていきます。 やがて、強い不安やイライラなどの不快な感情に襲われるようになり、それを打ち消すためにもっとたくさんお酒を飲む…という悪循環に陥るんです。 |
二見いすず: | 飲酒を続けるうちに、ますますお酒をやめられなくなる理由がよくわかりました。 次週もアルコール依存症についてさらに詳しく伺ってまいります。 お話は鹿児島県医師会の田中大三(たなか だいぞう)ドクターでした。 ありがとうございました。 |
田中大三Dr | ありがとうございました。 |