2020.1.18 第872回放送分 『アルコール依存症』3回目 ゲスト:田中大三ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは、「アルコール依存症」をテーマにお送りしています。
お話は、鹿児島県医師会の田中 大三(たなか だいぞう)ドクターです。
田中さん、よろしくお願いいたします。

田中大三Dr: よろしくお願いします。

二見いすず: 先週は、アルコール依存症の患者さんたちの多くが耐えがたいほどの生きづらさを抱えていて、その苦しみから逃れるためにお酒を飲まずにいられなくなる、というお話を伺いました。

田中大三Dr はい。
大量のお酒を長期間飲み続けると、誰でもアルコール依存症になる可能性はあるのですが、人を信頼できて、どこかに自分の居場所があると思える人は大切なものを失くしてまでもお酒を飲み続けたりすることはないと思います。
依存症は「絆の病(やまい)」とも言われ、依存症から回復するには人との絆を取り戻し、安心できる居場所を持つことが何よりも重要なんです。

二見いすず: なるほど、とてもよくわかりました。
田中さんはアルコール依存や薬物依存などの治療がご専門ということですので、アルコール依存症の治療や回復の具体的な流れを教えていただけますか?

田中大三Dr アルコール依存症の治療は、まず断酒をすることが絶対条件です。
自分でお酒をやめることはほぼ不可能なので、入院をしていただき、医療スタッフのサポートを受けながら、お酒を断っていきます。
心身と脳機能の回復をめざして、さまざまなプログラムを通じて依存症に対しての理解を深め、新しい価値観を身に付けて、最終的には社会復帰を目指すというのが依存症治療の主な流れです。

二見いすず: アルコール依存症は入院治療が必要なのですね。
入院の期間はどれくらいなのでしょうか?

田中大三Dr だいたい3ヶ月から半年くらいになります。
きちんと断酒して適切な治療を受ければ、アルコールによって委縮した脳も半年から1年くらいで元に戻る可能性があります。
問題は、患者さんが退院後もずっと断酒を続けていけるかどうかです。

二見いすず: 退院してからもずっと断酒を続けなければならないのですね。
適量を飲むというのではだめなのですか?

田中大三Dr 残念ながら、アルコール依存症になってしまった方は、一生、断酒を続けなければなりません。一口でもお酒を飲んでしまうと、また飲みたいという欲求が抑えられなくなるからです。

二見いすず: 一生、お酒の誘惑に打ち勝っていくというのは、大変難しいように思いますが、どうすればいいのでしょうか。

田中大三Dr 前回、依存症からの回復には、安心できる居場所を持ち、人との絆を育むことが必要だというお話をしました。
アルコール依存症には、断酒会や「AA」と呼ばれる自助グループが全国各地にあります。
一生、断酒を続けていくためには同じ経験をした仲間が集まって本音で語り合い、支え合い、自分も誰かの役に立てているという実感を持つことが大切なのです。


二見いすず: 依存症から回復し、断酒を続けていくには、自助グループへの参加がとても大きな意味があるということですね。
お話は田中大三(たなか だいぞう)ドクターでした。
ありがとうございました。

田中大三Dr ありがとうございました。